社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年08月26日

日本国民の需要に合わせる日本農業の価値


 G7にあわせて、閣僚級の日米貿易交渉に目処が立ち、農産物の関税はTPPと同じレベルのものとなりました。政府が日本国民に約束していた通りの形で終結しそうなので、ひとまずホッとしています。

 アメリカは実用主義で“メリット・デメリット”で判断し、規制無しの自由経済をグローバルに推し進めようとしています。特にトランプ大統領は、二国間の力関係でアメリカのメリットをもぎ取ろうとしています。そして日本も、近年、科学技術や生産技術の進歩、特にICTやAIに優れていることを高く評価しており、どうしてもその国や人々に従いがちです。しかし、それは錯覚です。科学技術の進歩が人間性の進歩ではなく、人間的に優れているわけではありません。
 
 日本のように平地が少なく、縦に長い国土の各地で農業をすることは、世界の農業の適地と比べてみると、生産性の観点から劣るでしょう。しかし農業者は、農産物に対して命の維持のための価値だけでなく、文化の価値もまた作り出します。その意味で、国民の穏やかな暮らしを担う農業は日本にとって欠かせないものです。さらに、国防上の観点からも日本での農業活性化が欠かせません。このことは、日本国民が日本農業を支援しなければならないことに繋がります。早急には所得保証をとることは難しいですが、EU諸国と同様、少なくとも応援すべき予算措置や優遇税制、一定の規制を施すことが必要です。

 さて、少子高齢化で生産量も消費金額も減っている中で、花きはどうすれば良いでしょうか。一つの成功ストーリーとして、大田花きが事務局になって多数の産地や流通業者と一緒に検討している「フラワー需給マッチング協議会(以下、「FMA」)」が創られました。FMAでは、実需者の使用実態に合った加工用途切花「スマートフラワー規格」が提案されています。

 ホームユース(仏花を含む)の分野では、花を小さく使うことが多くなっています。これは花だけではありません。例えばカレンダーも、卓上サイズの小さなカレンダーが人気です。“個人用”のカレンダーになってきているのと同様、世帯人数に合わせて、二人用、一人用の切花(鉢)の大きさが使われてきているのです。また、家庭にある花瓶は20センチくらいが一番多いです。大きくても30センチくらいでしょう。まして、自分の家に飾るとなったら、殆ど20センチ以下の花瓶にいけるような小さな花束が選ばれることが多いのです。花のある生活を広めようとしたら、「素敵なブーケや鉢花が手頃な値段」でないと買ってもらえません。現在、ホームユースはブーケメーカーが納品したスーパーの花の売上が、専門店のホームユースより大きくなってきています。そのブーケメーカーでは、未だ加工する際の手間も廃棄物も多く、結果的に花きの小売価格が高くなってしまいます。ブーケメーカーと卸売市場との取引はセリ前取引が多いですが、是非とも契約取引にして生産者に作ってもらったり、あるいは、仕様を変えてもらう必要があります。その時、生産者が応分の所得が得られる規格(スマートフラワー規格)をFMAは提案し、花き消費拡大、ひいては生産拡大と生産者所得増を目指しています。

 海外から野菜や切花が入ってきていますが、いずれも加工用です。国内生産者もこの分野に入っていかなければならなりません。ものによっては国産を保冷貯蔵し、時期に合わせて使って貰っても良いのではないでしょうか。あらゆる消費が個別化している中で「スマートフラワー規格」を実施した取引を行えば、必ず花きの取扱量、生産量を増やすことが出来ます。国内生産者と卸売市場はこれを目指すべきです。是非とも、予約相対の際に「スマートフラワー規格」を導入し、「買い手良し、生産者良し」を実現して儲けて欲しいと思います。

※フラワー需給マッチング協議会(FMA)平成30年度活動報告のまとめはこちら


投稿者 磯村信夫 16:32