社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2024年02月19日

セリの復活と八百屋さん販売方式


 暖かい日が続いたかと思うと、また今週は冬の寒さに戻るという。寒暖差が激しい日々が続いているので、卸売市場の需給調整能力が発揮出来るというものだ。本日も暖かかったから例年よりも入荷が多かった。

 採れすぎて相場が下がった時、予定より少なくて相場が高騰した時、卸売市場がその「多い」「少ない」「高い」「安い」を調整する。契約取引やセリ前の相対取引が主体になった現在も、セリで相場を決定し、セリ取引で予定外の荷物を捌くことも多い。果たして、全量を相対取引で価格決定して分配することが出来るだろうか。最後の一品まで売り切ることが卸売市場の約束であるので、セリ取引をしないということは、手足をもがれたことになる。

 大田花きはセリを大切にしている。理由は日本の花の建値はセリで生み出されると思うからだ。そして、取引先各位の応援のおかげで、大田花きは日本で最大の取扱い量の卸売会社となっているので、日本の花の建値を形成する責任があると思うからだ。2023年度の下半期、経済動向は個人消費が振るわないようだ。そしてもう一度個人消費が活発になるのは、本年の夏頃からという声が多い。 それまで、家庭需要の財布の紐は固いだろう。このような状況下だからこそ、叩き売りではないセリが重要だ。セリが当てにならなければならないのだ。これはその卸売会社の日頃の取引運営姿勢に表れる。

 セリ取引とセリ前取引に同じものがあれば、セリ前取引の方が高い値段がつくのが常識だ。何故ならセリの手前で商品を確保し、価格を決定させるからだ。これは喉が渇いている時に水を飲むようなものだ。従って、セリ前取引はネゴシエーションをしないと産地良し、買い手良しという相場にはならない。本日の相場は前回のセリ相場をもとに、大田花きの場合には需要の強弱を考え設定される。他市場は日本農業新聞の日本全国の相場をみて、また産地の希望価格を聞いて買い手とやり取りすることになる。しかし、相対以外のセリ取引での相場が、その市場の相場だと評価される。本当はセリ相場、相対相場と分けるべきかもしれないが、感覚的にセリ相場がその市場の真の相場だと思われている。

 青果でスーパーだけでなく専門店の八百屋さんが街にあるのは、役割が違うからだ。スーパーはセリ前取引、予約相対品を主に販売する。一方、専門店や街の八百屋さんは、セリでないと評価出来ない高級品や、予定よりも多かったためセリで捌かれるもの等を販売する。花の場合、嘗ては八百屋さんのような売り方をする生花店が多数あった。安ければ沢山買って安く販売する。プロなので高い時には高く売る。しかし現在の生花店は、おおよその小売価格を決めてしまうので、卸売価格だけが変動している状態だ。「八百屋さん的な」と言った方が良いか、このディスカウンター的役割が花の小売店に無いことが、取引の硬直化を起こしたり、あるいは、生花店のお取引先が多い市場なのに力が無くなってきたりしている一因だ。これは、小売店の販売方式、経営哲学による。

 天候異変が続く昨今、保冷庫の設備と同様に、もう一度、卸売市場しか出来ないセリ取引の重要性を訴求し、小売店の八百屋さんのような販売方式を買参人にお願いしていく必要があるのではないか。


 投稿者 磯村信夫  17:11