社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2024年02月26日

人の生成がその業界の発展に繋がる


 3月3日のひな祭りはもうすぐだが、花桃が足りない。主産地は北茨城、そして群馬県北部、埼玉県では秩父等、近在の大宮、川崎を除いていずれも涼しいところだ。そういった所ですら夏の暑さで花芽が飛んでしまい、切り出してみたものの、ロスの多いこと多いこと。温暖化の影響を強く感じざるを得ない。温暖化対策に向けてのCO2削減ほか、花き業界でも出来ることはやっていき、もっと良い地球環境を次世代に繋いでいかなければならない。

 Well-being(ウェルビーイング)を実現する花き業界もまた、人口減で人手不足だ。従来の花き業界と言われる専門花きの生産者、花市場(卸・仲卸)、花専門の運送店、生花店は一人抜け、二人抜けして、何か無常感がつきまとっている。しかし、世界の花き産業を見てみれば、アジア、南米、アフリカなどの花き産地は、いずれも1農場10ヘクタール単位で増えているし、消費の中心のヨーロッパ、日本からアメリカ、中国、G20、そしてこれからの中東、アフリカ等、需要も確実に増えていくことが見込まれている。日本でも近年、21世紀生まれの若い人たちは花や緑を生活に取り入れるようになっている。また、日本は人口減だが、一人一人の生活空間は広がってきている。確かに首都圏では再度人口が集中し始めており、マンション等は狭いところもあるが、新たに作られたビルやリノベした住宅、オフィスも緑豊かな清々しい生活空間になっている。またそれが快適で能率が上がる空間だと認識され、鉢物や苗物、木・室内の切花なども、更なる消費拡大が期待されている。そして、花の販売場所も多様だ。スーパーマーケットは勿論だが、ディスカウントストアや家具屋、アパレルの専門店、コンビニやドラッグストア、そしてサブスクリプション、はたまた道の駅などの直売所でも、勿論、ネット販売も、消費者の要望に応えて売り場は広がってきている。

 人手不足で無常感のある花き業界だが、これを乗り越えるためには、「道」を極める強さが必要ではないか。歴史を辿れば平安時代から鎌倉時代にかけて、また、室町から戦国時代にかけて、強さや厳しさを身に付けた立ち振る舞いや考えである「道」を極めることで、「無常」を乗り越えていた。もののあはれと言われるように、日本文化は優しさと同時に、強さと厳しさを併せ持つのだ。華道、茶道、(沢山あるので省略して)仏道、神道、武士道…と、「道」によって人としての成長と周りの発展があるのである。志す業界を極め邁進することによって、結果、その仕事、あるいは産業などが発展していくのだ。

 私もこのことに気づいて「市場道」を提唱し、社内に呼びかけてきた。今世紀に入って少し経ってからのことだ。教え、「道」に従って仕事をしていく。そうすることによって自分を高めていく。ひいてはその組織が、その業界が、そしてその業界と関わり合いがある花の場合では生産者や輸送会社、生花店、そして消費者が繁盛する。このようになっているのではないか。この確信が私にはある。

 このコラムを読んでいただいている皆さま方も、「道」のついたことを極めてもらいたい。無常感を「強さや厳しさ」を持つ「道」で乗り越えてもらいたい。そうすることで、結果的に自身の成長と業界の発展に繋がっていく筈だ。例えばお手洗いの掃除等も「掃除道」で、仏道や神道に通ずるものであると思われる。

 投稿者 磯村信夫  11:36