社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年03月27日

2016年度の花き業界から、2017年度やるべきこと


 2016年度最後のコラムなので、1年間に起こったことや心理状況を語りつつ、2017年度へ臨む姿勢をお話ししたい。

 日本社会のベースにあったのは、生活者がより合理的に生活出来ることを目指した変革だった。例えば、インターネット販売が伸びたり、地方創生に注力したり、働き方改革であったり、あらゆる物事において、一人一人の関心や時間・お金の使い方に注目して変革が行われようとしてきた。もう一つの傾向として、モノやサービスの供給サイド、すなわち、ビジネスからの視点では、世界では、部品メーカーや設計、組み立て業者まで水平にチームを組み、モノやサービスを作りだすモジュール化の時代となった。ガラケーやスマホを、どこの国のどんな企業が作っているのか見れば、日本がこの分野で弱体化していることが分かる。一方、モジュール化しにくい垂直統合的な仕事で、マーケティングマインドに富んだモノづくりの視点を有する農業は、日本の得意技であるので、一つの未来、可能性ある産業として取り上げられた。もちろん、農業者の高齢化等による供給力の低下が一方にある。お米の減反政策を行わなかった農業者の所得の目減り、国土保全の問題もある。しかし、その供給力をも元に戻すことだけではなく、モジュール化されにくい農産物への期待があるのだ。

 この二つの変革を分母に、2016年度起こってきたことは、園芸産品の堅調相場である。野菜、果物ともに、2014年から17年の春まで堅調であった。花きの場合は、天候の影響を受けて市況の乱高下があった。今後とも、天候に左右される傾向は残念ながら続くと予測されている。また、青果物で、卸価格、店頭価格まで下がっていったのは、年度末の2017年3月からであった。原油価格はかつての高値のような状況にはならないと、アメリカのシェールガス等のイノベーションから想定されており、まだ少数だが、積極的な設備投資を行っている青果・花きの農業者、農業会社が出てきている。

 夏頃から、農業改革の中で中間流通無用論、卸売市場不要論が農業改革で叫ばれるようになった。その中で、中間流通業者としての卸売市場の位置づけを、どのようなものにしていくか。本当に無くて良いのか。農業改革通りに進めば、生産者は直接、実需者に販売するようになる。全農は卸売市場への委託出荷ではなく買取販売を行うことになる。農協の信用事業や共済事業を含め、もう一度、既存の農業関係業者は、どう自分が働いて、農家の所得向上に繋げることが出来るか。また、生活者にお金を出してでも買ってもらい、身体と心の健康を提供出来るか。少なくとも、「今何をしていくべきか」を、全中や全農、農協、卸売市場、農業資材関係業者は検討し、未来志向で自己改革をしなければならないとの覚悟をさせたのが、2016年11月末、12月であった。

 2017年1月からはっきりしていることは、野菜と果物のしっかりした消費実態だ。サプリメントよりも、可能な限り直接食べることへの生活者の健康志向がある。そして、青果や果物への出費がかさむ分、花の予算枠が狭まっている。しかし、既に少子高齢化の為、胃袋は更に小さくなっていく。園芸農業を活性化させるためには、今後とも消費拡大が期待出来る花を重要化し、儲かる農業の大品目に育てなければならない。

 農業改革の中で我々花き業界が取り組むべき課題は、今、日本国花き振興法の予算を頂いて、花きイベントや花育、輸出事業等を行っている。これを、ビジネスとして成り立たつようにすることだ。国民の花への支出が少なくなった分を挽回しようと、国の補助金で取り組んでいるこの行為をペイさせるのだ。また、花きの場合、物日は仏事に関わることが多い。しかし、スーパーの花束販売において、菊類一辺倒の花束だけでは、生活者を満足させることが出来なくなってきた。花持ちは勿論のこと、季節感や色合い等、一段上の物日の花束が求められるようになった。こういった生活者の嗜好に対応していくことだ。また、生活者は鉢物苗物も買いたい。スーパーで光が足りない室内売場で苗や鉢を販売しても、品傷みしにくいように、弱光の慣らしを行い、店持ちを良くすることも必要だ。

 2016年度、野菜・果物・花きの三つだけを取り上げると、花の一人負けのように感じている生産者や小売店がいるだろう。しかし、花は人を幸せにすることが出来る。流通のことはともかく、大切なのは、生産者がマーケティングマインドを持って花を作ることであり、生活者にお金を払ってでも花や緑を買ってもらうことだ。さらに、それを橋渡しする小売店が、持続的に商売を出来るようにすることである。お金を出してくださる生活者、そして、花き業界の主役である生産者と、準主役の小売店。生活者を除くと、業界ではこの二者が大切で、もしお困りのことがあれば、中間流通業者である卸売市場はお手伝いさせて頂きたいと考えている。何でも言ってきてください。そういう流通チャネル多様化の時代に本格的に入っていこうとする変革期にある。


投稿者 磯村信夫 : 16:40