社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年03月07日

需要期に気をつけたいこと ―ロジスティック、情報、脱・言霊主義―


 ロシアのウクライナ侵攻でロシアへの経済制裁が行われ、新聞紙面では世界の輸出入のお金の流通、あるいは、クレジットカードのオンライン決済停止等が言及されているが、もっと大きな被害は輸出入が出来なくなっていることだ。関係国の港では大きなコンテナ船の通関が停止されたり、飛行便もロシア間では人も物もストップ。また、ロシア上空を通過出来ない等、アジア、ヨーロッパ間の飛行便、ロジスティックの混乱がかなり大きなものになっている。更に天然ガスやその他いくつかの希少金属、及び、色々な素材のサプライチェーンが寸断され、あらゆる産業界に大変なダメージとなっている。

 今回は、今起きているロシアのウクライナ侵攻だけでなく、日本がこれまで戦ってきた戦争と、世界の中で外交交渉、あるいは、ビジネス上で競争し合っている中で、日本が気を付けなければならない点をお伝えしたい。1つ目は、サプライチェーンを含むロジスティックの重要性である。物を作ったり消費したりする時、現実問題としてロジスティックが欠かせない。2つ目に情報力だ。今、ロシアは情報統制を国内で敷き、ロシア国内では、海外の放送局も外国人もその統制下にある。また、いわゆる「インテリジェンス」と呼ばれるスパイ活動は、いかに情報が大切かを物語っている。国家間だけの話ではない。企業においても「敵を知り己を知れば百戦危うからず」で公開・非公開情報を取っていくことが必要だ。ここを日本はあまり重要視してこなかったのではないだろうか。あるいは、自分にとって都合の悪い情報は事実であっても検討せずそのまま過ごすことがあるのではないか。会社で言えば、自社が立ちいかなくなっている実の数字を直視せず、「何とかなるさ」と無視してしまっている企業もあるのではないか。農業でも、卸売市場の市場経由率、取扱高といった情報を明確に捉え、課題に対処する努力をしてこなかったのではないか。このように思うのである。 

 日本には「言霊主義」なるものがある。悪いことを考えたり、口に出すとそれが実現してしまいそうなので言わない。可能性としてリスクがあっても、そのことを言わずいつも良い言葉ばかり。これでは最悪の事態を想定出来ず、現実を無視することになりはしないだろうか。いくらICTが発達し、SNSでコミュニケーションを取るようになり、様々な形で多岐にわたる情報を得ることが出来るといえども、良いこと・悪いことをしっかり言葉にして議論を行い、三現主義(現物・現場・現実)で見据え、対処することが必要なのではないか。言霊主義のまま現実から乖離しては、その人やその会社が駄目になっていく。国もそうだ。まさに大東亜戦争の時のようだ。このことに注意して仕事に取り組む必要がある。

 花は3月の需要期に突入した。12月と3月で量も金額も多く取扱わないと、他の月を補い、プラスにすることが出来ない。先述したロジスティックの重要性を念頭に、取扱い額を上げていく必要がある。量販店では出来合いの花束が多いから、通常期の10倍以上が3月の物日には売れる。専門店は対面販売なので良くて3倍と言われているが、事前のネット注文、事前に作成したアレンジや花束、鉢物の販売であれば、母の日がそうである通り、さっと売れていく。そうすれば日頃の少なくとも3倍以上は売ることが出来るだろう。段取り、下ごしらえをすることなど、いくつもやっておくべきことがロジスティクス上ある筈だ。また、情報の大切さも言うまでもない。自分はこの地域の花売り場の競合の中で、どんな役割与えられているのか。自社のターゲットとする生活者の属性やライフスタイルを知り、ライバルの生花店、スーパー、ホームセンター、あるいはコロナ禍で選択肢が増えたネット花販売の売り方を見る。自分の都合の悪いことも直視し、現実を見据えて努力することが必要なのだ。大田花き、あるいは、私自身も持つ日本人の欠点を申し上げた。この3月の需要期は、より多くの生活者に花のある生活をしてもらおうではないか。



投稿者 磯村信夫 16:33