社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年02月13日

進化を促す現物評価の花市場


 一巡して、一輪カーネーションが、またスター街道にのし上がってきた。ワンステムで花が大きく、団塊ジュニアの人たちが好む形状だ。世界でも、西側先進国だけでなく、旧共産圏を中心とした国々やブリックスと呼ばれる国々で、30~40歳代が花き需要を引っ張っていっている。日本はその中でも、アメリカの影響を強く受けたせいで、カーネーションに対する思い入れが特に強い国だ。ナデシコまで含めると、「家庭で失敗しない切花の代表」とも言える花に育ってきている。後は、鉢物・苗物の更なる品種改良が望まれよう。

 さて、何故このようなことを言うかと、バラ一辺倒のバレンタインギフトの花束用に、日本では、バラだけでなく、カーネーションやチューリップ等々の多彩な花が使われ、その可能性を秘めているからだ。ご存知の方もいらっしゃると思うが、切花用のアルストロメリアやユリの新品種は、日本で評価されたものが世界で評価されるものになっている。同様に、一輪カーネーション、スプレーカーネーションもその傾向にあるのだ。まず、日本で評価してもらい、世界に打って出る。こういう種苗販売の手法がとられている。

 日本では、カーネーションはスーパーマーケットで売られるだけではない。同様に、スターチス・シヌアータも、スーパーマーケット、あるいは、仏花用の花だけではない。花の使い方を決めつけることなく、可能性を探し求めて育種した品種が市場に出回ると、日本中の市場で仲卸・小売が適切にそれを評価する。

 他の先進国に比べ、日本の専門店は、多種多様な花を求める。同じ花、例えば、カーネーションにおいても、様々な色や花弁の形、咲き方を求めるのだ。こういった、進化する、或いは、変化を求める気持ちが、お花屋さんにはある。この気持ちを失わない専門店に、いかに繁栄してもらうか、少なくとも存続してもらうかが、日本の花き業界全体を考えた時に重要だ。

 今後とも、珍しいものを追い求めること、例え同じ品目でも、絶えず変化を求めること。この興味こそ、日本の花き業界が世界を引っ張っていっている大切な要因となっていっている。そのシンボルが、切花では失敗しない大品目であるカーネーション、トルコキキョウ、ユリ、菊、枝物なのだ。これらを専門店、目利きの仲卸が評価すること、せり人が判定すること。とにかく、現物を見て、比較して、「あーでもない、こーでもない」と言いながら、卸売市場で価格を決定することが必要なのである。


投稿者 磯村信夫 : 17:41