社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年01月23日

見かけの売上高の増加に気を許すな


 この頃フレンドショアリングという言葉を耳にするようになってきた。かつては、人件費の安いところに工場を移しそこから輸入するという事をオフショアリングと言ってオランダではフローラホランドの組合員がケニアやエチオピアでバラを作るなどして出荷していた。日本の工場はかなり多くオフショアで中国に行き、大田区の町工場は自動車産業でタイに行ったりしていた。だが米中のデカップリングとなり、中国、ロシア、北朝鮮、イラン、など専制国家ともいえる経済体制を強いている国家資本主義の国とは、国防上の問題から品物によってサプライチェーンを組めないという状況だが、今後最も大切になっていくAIやロボット、デジタル関連の物や武器などはまさにフレンドショアリングをしていく必要があると世界中の国々が舵を切った。

 そしてリショアリング。これはリターンの意味だが、国産回帰がいわれている。農産物も同様で仮に戦争が起きた時の事を考えると、どこの先進国でも農業者の収入の内、国家の税金で賄われている金額が半分以上占めているのが普通だが、日本は一般的にいわれているところでは今まで37~8%とアメリカより少ない。リショアリングでそこをもう一度考え直していかなければならない。これはDX関連のICチップだけでなくAIやロボットなどは人口減でも移民を受け入れないでGDPを今よりも大きくしようと目論んでいる日本にとってここは譲れないところであろう。カタカナばかりで恐縮だがグリーンインフレーションと云い現時点では従来の機器や手法が使ってないので、CO2を削減する方法では、生産コストが上がらざるを得ない現況があるが、国防に関する武器や自衛隊の増員なども今までよりもお金がかかる状況になっている。武器というのは絶えず一番新しくないと相手に勝てないので価値を生むという経済の法則からすると違った考え方をしないといけない投資が毎年繰り返される事になる。こうなると今までと同じように生活をすると日本の台所は苦しくなる。コストが上がり所得が増えないので生活が苦しくなっていくのだ。そうなると生産性の向上しかない。移民を入れずに労働力不足分をAIとロボットでやって行こうとしているわけだから、その開発や設備投資が一段落するまで人間が生産性を少しでも上げて行かないと新たな負担に耐えられない。製品やサービスに転嫁できるのか、それだけ競争力のあるものを作っているのか。日本は貧乏な人たちがますます増えている事を悲観的に考えておかなければならない。何も憂時に平和な花は関係ないとは言っていない。どんな世になっても日常生活がある。その中で今の大変な思いをしているウクライナや家族が兵隊にとられて暗い気持ちになっているロシアでも花のある生活が日常の中で繰り返されている。お葬式の棺に捧げる花の事を言っているわけではない、日常生活上の花だ。日本は日華事変、その後続けて起きた大東亜戦争でも量的に少なくはなったが花はしっかり日常の中で売れていた。昭和の食糧規制では花も一部作っていいところがあった。流通しそれは売れていたのだ。これは極端な例であったが日常生活の中で結婚式やお葬式などイベントがある。言いたいことは、いつの世も用途に合わせて欲しいと思っている花を作ってもらいそれを流通させるという事だ。お花屋さんは市場で買ってきたら店に持って帰った途端さっと売れてしまう。こういうものを多くする。そして色々な事があってもなるべく手間暇かけず知恵で消費者が喜ぶものを届けるようにする。即ち現場とは、市場の人間であれば、卸仲卸の現場と店頭の現場、そして作る畑の現場、この3つとコミュニケーションを通じお互いによく知り生産流通販売する事だ。そしてAIやロボットを使うことを心掛けてやっていく。消費を拡大しないといけない、食べる物であれば人口が少なくなるがよりきめ細かく需要にあったものを作らないといけない。人間が減った代わりにAIやロボットを使うので日本は胃袋は減る一方だからだ。花の場合は即ち消費の拡大だ。生産性を上げる事と消費の拡大をどんな世の中になってもやっていく。3つの現場を押さえて立場の違う生産者、市場(卸仲卸)、各業態の小売はコミュニケーションをとってやっていく。そして必ず頭に入れなければならないのは、花は少子高齢化の日本でも需要を減らさないですむものだということだ。SDGsにおいて欠かせないものなのだ。AIやロボットに簡単な仕事が奪われて失業者が増えて二極化、精神的な病、物騒な世の中になってもそういうときこそ必要とされるのが花だ。だから消費の拡大を考える事をいつもおこなわなければならない。

 今はインフレで見かけの売上高が増加した。生産が先に少なくなり需要はまだあるので卸売価格が高くなりその高くなった花を買ったものだから小売価格を上げる、そして殆どのお店で割高感を演出してしまい需要が減る。消費者は手を引っ込める。生産コストが何もかも上がっているので、もう年だからと花つくりをやめる、また卸売価格が高くなる、など縮小均衡負のスパイラルの中で高くなっている。客数が減っているが取扱金額は去年並み、場合によってはそれよりいいので安心している。だが、需要が逃げているのだ。この状況を危機を持って見て、どうすれば良いか。ずっとこのコラムで言い続けてきたことだが、考えて実行して欲しい。サプライチェーンの中では大田花きが目指す仕事は、上に述べた3つの現場を踏まえ、売れる花をつくってもらうべく産地へ行く、物流を合理化するため産地へ行く、即ち生産者と一緒になって小売店を支援する、そして小売店が繁盛し需要が増える。この情報(将来はデジタル)を共有する。これをぐるぐるまわす。ここが生産性アップと需要拡大を一緒にすることなのである。まだまだ出来ていないが、これを仕事としているのである。皆さん方もご自分の参加しているサプライチェーンの中でこれをこの仕事をお願いしたい。それが花き産業の発展に繋がります。




投稿者 磯村信夫  15:50