社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年08月05日

芸術に親しむほか


 昨日の日曜日、大田花きの御殿場東山の研修所の前にある富士カントリークラブでゴルフをした。朝から富士山が見え、ラウンドが終わる午後までずっと見えていた。暑かったので、空気が膨張し、靄がかかるかと思いきや、決してそうではなかった。ホールによっては西丹沢が見えるが、その空気感はセザンヌの絵を見ているかのようであった。

 花き業界の人たちは、どのぐらい芸術に親しんでいるだろうか。デジタルな社会になり、今後、AIなどがよりよく生きるための手助けをしてくれるようになるが、そうなると、我々はさらに右脳を鍛えて、美意識や感性に訴えることがますます必要になってくる。ことさら、花き業界の人は、芸術に親しみ、事物に愛情をもって接し、人を介在した真善美がわかる人になる必要がある。良い絵を見たり、文学に親しんだり、劇を見たりして、楽しみの中で芸術がわかる人間になってもらいたい。そうして初めて、園芸作物や活けられた花、庭、ランドスケープの本物がわかるようになってくる。 昨日の御殿場の空気は、セザンヌが描いた空気があった。
 
 5日の農業新聞の1面で、立命館大学 食マネジメント学部の新山教授が、コスト重視の議論、農産物販売の価格問題について触れていた。うろ覚えで恐縮だが、今年になってEUは、EU生産者の手取りが、小売価格に対して30パーセントを切ったことを、言うなれば買い叩きとして裁定で警告をならした。それを、小生は知っていたので、ひとつの重要な提案として読んだ。実は、新山教授は、規制改革委員会で卸売市場無用論がでたとき、卸売市場の有用性を強調してくれた教授である。

 スーパーのバイヤーや加工業者のバイヤーは、交渉力に長けているが、農場や系統農協の職員は、交渉の機会がなかった分弱く、結局安値になってしまう。しかし、これでは駄目で、もう一度、厳密なる合理的な生産コストの計算そして、決して欲張らない再生産価格をきちんと出し、卸売会社とあらゆる情報を共有して、卸売市場が産地の代理人で入る。産地は、交渉人として卸売市場を使う。あるいは仲卸を使う。こうすることが必要だ。

 良いものを低コストで作ると言うのはメーカーの役割である。しかし、現時点でどんなに努力しても難しい最低コストはあるだろう。これをきちんと計算して、交渉する。自分の交渉力が足りないとすれば、卸売市場にその役割をさせる。このことが、EUのように小売価格に対して生産者手取りが30パーセントにもいかないという事の無いようにする、ひとつの政策であると思われる。



投稿者 磯村信夫 16:08