社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年07月24日

花も売れ筋ラインの商品政策を


 先週、営業担当者と社内で話をしていたところ、今年の8月お盆の花束を、上代を変えずに花を一本少なくする売り場が多いと聞いた。それはマズイ。値段はともかく、量を沢山使ってもらい沢山の人に花を買ってもらう。供給が増えることで花き生産も増える。この循環が無ければ、花き産業の目的である「花で人を幸せにする」ことが出来ないではないか。では、どうしたら良いかと議論した。

 小売業は2月決算のところが多い。この3~5月の第一四半期は、久しぶりに各小売業の売上・利益ともに良かったようだ。個人消費復活、こんな兆しが見えてきた。決算を見てみると、よく「お値段以上」と言われるようなプライベートブランドの商品や、コンビニでも100円ショップや生活雑貨等と提携してセレクトショップ化する等で価格訴求をしているものと、機能を前面に売り出して、その機能にふさわしい価格で売っているもの、これらが消費者に支持されているということだった。今後もこの方向で進むのだろうが、そうすると花の場合、本数を減らして価格訴求を図ると、何かステルス値上げの感じがして、かえって需要喚起が出来なくなってしまうのではないか。勿論、本数を減らした分だけスプレータイプを入れてボリュームを損なわないようにする等の工夫があるのかもしれないが、基本的なやり方がこれだけではいけないと思う。

 まずは機能面を前面にPRする。例えば「一週間花もちします」という花もちの機能面の訴求。もし商品が悪くなったら交換すれば良いし、それは小売店やスーパー、花束加工業者と卸が協力すれば出来ることだ。それ以外にも、アメリカのフローリストが基本的にやっていることだが、暑い時でも清々しい気持ちになる色や香りがある等、花の効用を訴求することだ。医学的エビデンスを付けて販売する。勿論、CO2対策や有機・減農薬を施された栽培、あるいは、資源を無駄にしない栽培方法で生産されたというMPS認証説明付き。「生産者はこの暑い中頑張っており、こんな品質の良い花を生産しています」といった生産者情報を携帯で見られる等も必要。こういった付加価値を高めた販売で小売価格の設定をしてもらうのだ。そして、流通経費を差し引いても、小売価格の最低でも3~3、5割の売上を生産者が取れるようにする。一方で、価格訴求品の販売も欠かせないだろう。スプレータイプの枝をカットして、それを一本として使うもの。枝物・葉物を多用したもの。小さいブーケになるような、手軽に少しでも飾れる野の草花のようなもの。ドライフラワーになって長く楽しめるもの等々、いくつかのバリュエーションが必要となる。切花なら、花瓶の水の中でバクテリアが繁殖するのを防ぐ薬等をサービスで付けることも必要だ。

 機能を前面に出した訴求品、そして、環境・有機等に配慮した商品等、ラインをそろえる。そして、価格的に割安感のあるもので攻めていただく必要があると思う。そうすれば花の消費は拡大するのではないか。是非とも、好調な小売業の取扱い品目の中に、切花、鉢物を入れてもらいたい。暑さ厳しい9月9日頃の間で商品政策を、花の小売会社は社内で、また納品業者と相談し、売れる花売り場をともに作っていって欲しい。  


 投稿者 磯村信夫  14:49