社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年10月02日

花き生産者も小売業者も事業を営んでいるから、理念が必要だ


 2024年問題における運転手の働き方改革、また教育関係者・医療関係者の働き方改革。これらは待ったなしで、政府の方針通り2024年に労働時間の短縮が出来るよう準備している。我々卸売市場においても同様だ。大田花きでは、今年度で有休取得がまだの社員や、残業時間が多い社員には、総務から本人と上席に、有休取得や残業時間を減らすようアナウンスがなされている。働き方改革においては、生産性をどう上げるかという問題と、人手不足の問題がある。

 新たに人手が欲しいと思ってもなかなか人が集まらない。この現況が卸売市場にはある。朝が早かったり、夜間勤務もある。大田花きには関係会社もあるので、出向がある場合もある。また、せっかく採用しても長続きしない人も出てくる。業界特有の様々な時間帯や環境があると思うが、働き方改革に則り、個人の家庭生活の上に仕事が乗っている。この家庭生活を一義にし、働くことの意義や時間の設定を行うことが欠かせない。更に、男女の賃金格差や、女性の管理職が少ない等の問題のある企業もまだまだ多いのではないか。花き業界(花き生産・JA花き部会・花き運送・花き市場・花き小売店)でも個人の家庭生活を意識し、女性が活躍出来る事業体を目指す業界にしていかなければならない。そして生産者と花の小売店の皆様に是非とも今後とも頑張ってもらいたいので、本日、お願いしたいことがある。それは①地元の卸売市場、あるいは、重点取引先である市場へ相談して、協力し合って自分の農場・店舗を経営していって欲しいということ、そして②自社の理念を明確にしてもらいたいこと、この2点だ。

 仮にご夫婦で、あるいはアルバイトを一人雇って店を切り盛りしているような小規模事業者であっても、市場と一緒に経営する気持ちで取り組んでもらいたい。生産者は、出荷先の市場で、大体自分の花を購入してくれる小売店が決まってくるので、その小売店のために、あるいは、その小売店がターゲットにしている地域の生活者のために花を市場に出荷し、小売店に購入してもらう。このサプライチェーンの意識を持って、どの品目・品種を作付けするか市場に聞いたり、その先の小売店に聞いたりして翌年に繋げていけば、必ず利益になる筈だ。小売店も、誰に向けて販売するか、場合によっては店の立地まで含めて、地元の卸売市場になんでも相談して欲しい。我々卸売市場は、皆さんと一緒になって生産・店づくりをするつもりで取組んでいきたいと思っている。

 生産者も小売店も、70歳以上の人たちが多い。小売店の場合、1964年東京オリンピックの頃に建てたビルが古くなって、地元の商店街も、あるいは駅周辺も改装中のところも多い。人の流れが変わって花が前よりも売れなくなっていく。この流れで小売店をやめてしまう人も多い。生産者も減少してしまっている。このような中で、自分はどのような理念で小売店を営んでいるのか、花き生産を行っているのか。この目指す理念を明確にする必要がある。大田花きであれば、「世界を花で笑顔にする」。このパーパスの下に、毎日仕事を行っている。ここのところ、生産が少なく単価が高い。単価が高ければ良いということではない。生産が増えない限りは、いずれ消費も少なくなる。今、コロナ禍を経て需要がはっきり“ある”ことが分かった。これは業界みんなが実感していることだろう。資材費の高騰やSDGsの課題等、様々ななすべきことも多い。農業も小売業も、センスや知識、技術が必要な大変な仕事だが、まずは「何を目指すか」という理念、「何を目的として働いているのか」、ここを明確に意識することで、行動を起こしていっても欲しいのだ。

 花作りは農場経営であり、小売店は花の小売店を経営している。「親がたまたまやっていたから後を継いだ」訳ではないだろう。仮にそうだとしても、理念のないところに事業は無いし、後継者も産まれない。今後、事業は存続することが出来ない。地域に住む人々に幸せを提供するために、花き生産も小売店も存在している筈だ。仮に自分が病気等で具合が悪くなっても、どうしたら事業を継続できるか。地域の人々のために考えていただきたいと思っている。難しいことは分かるが、理念で事業継続を勝ち取ってもらいたい。我々卸売市場(卸・仲卸)も、生産者と小売店と一緒になって、励んでいきたいと思う  


 投稿者 磯村信夫  16:21