社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2024年01月22日

花き業界は今のところまだら模様


 昨年1月下旬頃から、コロナ禍で起こった個人消費の追い風が、少し微風か、止んだのではないかといった空気感が出てきた。これは結局、需要期の3月くらいから、特にスーパーマーケットのセルフ売場で前年を下回るところが多くなってきたのがデータに表れていたようだ。セレクトショップ化した専門店、チェーン展開している専門店は、まだ微風だがフォローの風が吹いていた。今期の下半期も、昨年10月くらいから個人需要は下がったが、ギフトを含めると前年の売上を超えたところが多い。そして個人需要が減った分、来客店者数が減っている店舗が多い。サブスクリプションも同様だ。しかし、ギフト・イベント需要はサイフが違うから好調だ。

 2010年、日本のGDP成長率が3%の伸びを示したとき、花き業界は20世紀末から初めて前年の売上を更新した(2012年以降2020年までは昨年を下回った)。コロナ禍の2020年~2022年は伸びを感じさせる年であった。それが2023年頃から伸び率が鈍化した。大手企業はまだ良いものの、小・零細企業は今までの期待がある分、「景気が悪い」という実感を、花き業界の経営者たちも感じている。天候も良くない。エルニーニョ現象が発生し、その影響が翌年の今も続いている。本来の地域の天候ではない不順な天気が続いており、日本は地震も政治も経済も、何かスキャンダルが続いているみたいで、心理的にも今一つそれを跳ね返すだけの力がある状況ではない。

 花を扱っていると、まだまだ嗜好品の悲しさがある。他の必需品の農産物を購入した後に、余裕があれば花を買う。このような形になってしまっている。だからこそ我々花き業界は、コロナ禍で花を「生活に必要なもの」とした10代、20代の人に焦点を合わせた販売戦略を取らなければいけないと感じている。スタイルや色の好み、トレンド等の消費性向の消齢化※が起こり、SDGsやサスティナブルなもの、自然エネルギーや生物多様性等といった考え方まで含めて、若い世代が価値観を牽引している。仏花のカテゴリー、あるいはスーパーマーケットのカテゴリー等ももう一度、価値観の中心にいる若い世代に合わせた商品を販売していくことだ。これが今の時代を乗り切っていくには必要で、花き業界で方針立てて実行すべきだ。

 ※消齢化・・・広告代理店の博報堂生活総合研究所では、世代による意識や価値観の違いが無くなってきている「消齢化」を提唱し、分析を進めている。


 投稿者 磯村信夫  15:19