社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年04月24日

花き業界でも意識したい三つの主義


 大田花きには、社員の行動指針にすべきいくつかの標語がある。皆様にも参考にしてもらうべく、このうちの三つを紹介したい。

 一つ目が「三気主義」だ。花き業界の商売は「天気・景気・やる気」で構成されているので、これを意識して仕事をする。まずは「天気」。花は売るに天候、作るに天候である。例えば今日は涼しいので、「ゴールデンウィーク前ではあるが、ラナンキュラス等まだまだ楽しめるのではないか」。こう考える生花店の方も多くいるだろう。これが20度以上の気温になると、消費者も生花店も「母の日も近いし、もう初夏ものだ」と、バラやカーネーション、シャクヤク等の需要が高まる訳だ。そして、すべての業界がそうだが、花き業界も「景気」に左右される。GDPが去年比で2%弱の伸びだと考えると、様々なものが値上がりしている中で、花も小売価格を上げていきたいところだ。しかし、生活者の平均所得はなかなか上がらない。物価高で実質の可処分所得の平均値は下がっただろう。また、海外の見通しを調べると、G20、あるいは、そこに続く国々の経済成長が5%もいかない。中国のGDPは直近で4,5%増だというが、内需が堅調だとは言えない。輸出も今後とも振るわないだろう。一方、アメリカはベビーブーマーの退職期となっており、人手不足から賃金は上がる傾向にある。また、今までジャストインタイムでやってきたが、今の合言葉はジャストインケースだ。サプライチェーン上で在庫を持っておかなければならないと、殆どの企業は考えている。ただ、在庫を持つ分だけ経営数字は悪くなる。欧州の景気は構造的な難しさがある。2022年、日本は予期せぬ花の単価高で、利益をしっかり取ることは難しかったが、それなりの売上高があった。その為「まあまあかな」といった花き業界全体の景気観がある。しかし、前述したような世界の景気観から見ても、今後はそうは問屋が卸さない。少なくとも3~5年間はもう少し厳しく見たほうがいいのではないか。「景気<やる気」、こう思われる。

 二つ目に紹介したい標語は「三現主義」だ。現物、現場、現実、これを絶えず注視しながら仕事を進めるのだ。口先だけでは駄目だ。卸売市場であれば、生産地や生花店へ足を向けて「三現主義」を徹底し、コンサルタント営業を行うことが必要だ。社員すべてが商売人の気持ちで仕事を実行し、昨日よりも今日を良くしていかなければならない。難しいことだが、リアリストでなければ現実が良くなるよう導き出せないのである。

 最後に、「三も義」を最近社内で啓蒙している。いつも目標をもってことに望む。目的をもって行う。問題(イッシュー)を発見して解決する。これらが非常に大切である。人は見ようとしているものしか見えない。従って、目的までの手段はKPI(Key Performance Indicator)で数値化する。目標は、今期の場合であれば今期予算を設定する。これが会社のパーパスそのものに繋がっていく。生き生きとしている会社では、どの部署でも配属されたら「三も主義」で日々仕事をしている。何故、この仕事をやっているのか。その目的はなにか。どのような問題点があるか。日々考えてチャレンジし、やりとげることが重要だ。

 三つの主義をお伝えしたが、これらを意識する上で大切な「想像力」を最後にお伝えしたい。練習は嘘をつかないが、その練習も「相手の出方がこうだった時」等、その状況を想像し、練習をするから嘘をつかないのだ。スポーツも仕事も、生き方も、まず、必要なのはこうありたいと思う自分や会社のイメージ、目標に向かう一つの姿だ。まずパーパスがあり、そしてそれをやり遂げる自分の組織がある。そこで働く自分がある。そこに行くにはどうしたらよいのか。実現するにはどうしたら良いか想像して実践する。世界中にファンがいるメジャーリーガーの大谷翔平さんには想像力があり、そして、それに向けた実践力がある。こういうことであろう。想像力をまず豊かにすること。ここはよく生きることへの道筋で、欠かせないものである。      




投稿者 磯村信夫  15:10