社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年11月01日

白が足りない


 マスコミの報道によると、本年の渋谷でのハロウィンは雨の影響もあり、大きな混乱は無かったようだ。若者もホームパーティでハロウィンを行った人が多かったのだろうか。一般家庭での「お家ハロウィン」は、カボチャ等を飾って、後はカボチャや栗の料理を楽しむといった感じだろう。何人かの生花店の方に聞いたが、ハロウィンパーティー用と思われる花を買う人が、それなりにいたそうだ。オレンジと黒の色の取り合わせから、そのように思われたのだろう。

 葬儀件数において、年間平均よりも多いのが11月から3月までの五カ月だ。また、結婚式も、春先より秋の方が多い。先月10月から緊急事態宣言が全面解除されたが、酒類提供の制限等もあり、結婚披露宴はこの11月から本格化する。イベントも、検温や消毒を行い、場合によってはワクチンパスを見せながら活発に開催されるようになる。本日出荷されている枝物を見ても、家庭需要用にプラスして、丈が3mにならんとする大物も、多数出荷されている。いよいよ、いけこみ需要が戻りつつあるということだろう。しかしながら、今まで冠婚葬祭の花の需要が少なかったため、約2年間白系が安かった。大田花きでは白系の花も足りていない現象が9月のお彼岸頃から起き、10月から結婚式や葬儀も規模は小さいが件数が増加して、11月は白系の花が更に足りない。バロメーターとして、白バラの単価も堅調に戻ってきた。トルコギキョウはフザリウム属菌の病害で出荷量が増えて来ないため、これも相場は堅調。そして、月末需要も相まって、現時点では全体が供給不足による堅調相場となっている。

 さて、需要動向を見ると、生活者が好む花や緑、そして、使い勝手が良く、生花店にとって利益の出しやすい花や緑、この2つの条件が合致したとき、市況は堅調となり、単価も高く、量も増える。ただ、主に葬儀に使われる白菊は、中々難しいところだ。葬儀の花を受注している、とある生花店がこのように仰っていた。「100人前後、あるいはそれ以上の規模の葬儀において、白菊はハマリ役。ラインを出したり、凛々しく感じさせたりすることが出来る。我々は白菊を使う葬儀をもう40年もやってきたので、技術を持ち、利益を出せる仕組みがある。しかし、現在主流になりつつある1日葬や家族葬では、施主やご遺族の希望で、白菊以外の様々な花をミックスして使うことも増えた。それでも、家族葬でも時として白菊を比較的多く使った葬儀を提案し、白菊を使ってもらう」。このように、白菊を使いたい気持ちが業者にはある。利益を出す仕組みを持っているからだ。白菊の相場が、安値が続いたと思ったら戻る原因になっている。しかし、最後にこの生花店は仰っていた。「白菊の絶対量が無いと困るけれども、葬儀の花は確実に多様化している。葬儀を出すご家族や参列者が、葬儀の花で、『これ(白菊)が良い』と言うことはあまりない。ここを抑えておいて欲しいと思います」。

 白花の全体量の不足感は勤労感謝の日ぐらいまでは続く。「まだ少し足りない」というのは、12月の上旬まで続くのではないかと思われる。   


投稿者 磯村信夫 14:38