社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年01月22日

生活者の幸せに焦点を合わせる


 『款冬華(ふきのはなさく)』季節となったので、先週の土曜日は天ぷら屋さんに行き、ふき本来の味がのった天ぷらを楽しんだ。

 季節の花として、ようやく、房総の菜花やキンセンカも出始まった。昨年10月の日射量不足、台風の影響で、すっかり計画がくるってしまった園芸農産物だが、野菜の高値は、一般消費にも影響するので、マスコミでも取り上げられることが多い。一方、花は、野菜や果物の高値でお財布が圧迫され、小正月を過ぎたころから、過去5年の中では、ちょうど平均価格の水準となっている。

 昨年からの傾向だが、2015年以前と違うのは、スーパー等の花売り場が定着し、中には、花束だけを買いにいくためにスーパーへ行くお客さんも出てきた位だ。ただし、スーパー等の売場は、お彼岸や盆正月の売れる時には、その面積を広げるが、普段は小さくなる。街の花屋さんは、物日の時にスーパーにお客さんをとられてしまうことも多いので、店頭販売中心で後継者のいない花屋さんは、店を畳むところが増えている。

 大の切花好きで一週間に一束、大の鉢物好きで一ヶ月に一鉢買う位だろうから、野菜や果物に比べて、花の商品回転率は格段に違う。このことは、生鮮品の中でも平準化が難しく、損益分岐点が高くなってしまうことを意味する。解決策は、ウィークエンドフラワーやフラワーフライデーのプロモーション活動を行い、習慣的に一週間に一回、家庭の中に花を取り入れてもらうことだ。さらに、フラワービズで、そこに花があれば労働生産性が上がることが分かっているから(エビデンスあり)、月曜にオフィスに飾ってもらう。これを徹底することだ。人類が健やかに生きていくためには、自然を感じること、芸術や文化を感じる生活をすることが、衣食住とお金の次くらいに、どうしても必要なのだ。

 必ず人目につく駅に出店している花店の皆様方は、消費者と接点を持ってくれている、花き業界のビジネスチャンスを作ってくれているところだ。また、スーパーマーケットに花束を卸している花束加工会社でも、その花売り場を責任もって、思わず「欲しい」と思ってしまうような楽しい売場にしている。店舗の花屋さんから始まり、ネット販売、雑貨店、量販店、あるいは、フラワーアレンジ教室、華道教室まで含めて、一般消費者が直接触れるところが、我々花き業界の宝である。業界全体が自分たちの運命を委ねているところ、ここをもっともっと応援しなければならない。

 (一財)日本花普及センター主催の「日本フラワービジネス大賞」は、花き業界で先進的な取り組みを行った団体等を表彰している。2017年は、「育種・生産」部門では島根県農業技術センター殿が受賞した。アジサイの品種改良を行い、生産者の組織化、供給体制を盤石なものにし、消費地の卸売市場と組み、小売りのチャネルを明確にして販売したことが評価された。そして、「流通・販売」部門では、メルシーフラワー殿が受賞した。委託販売方式で花の鮮度と品質、陳列方法、品揃え、これらのメンテナンスをしっかりと行い、納品しているスーパーの花売り場を魅力あるものにしている。「チャレンジ」部門では、「花いけバトル」主催者の花いけジャパンプロジェクト殿が受賞した。見ていて楽しい、感動するだけでなく、出来上がった作品の素晴らしさによって、十代の若い方々からも「花をやりたい」と言う人たちを増やしている。その素晴らしいムーブメントを起こした。

 新しい時代が始まっており、そこでいかに生活者に近づいて花のある生活を楽しんでもらうか。生活者へ向けての発信を、需要別の各分野で成功されている方々を見習い、まず、生活者に買って貰う。ここに目標を定めて、業界の皆様には取り組んでもらいたいと思う次第である。



投稿者 磯村信夫 : 15:45