社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年02月20日

生活者の価値観をつかむ花事


 2月18日、19日は、1年に二回ある連続した休市の一つだ。大田花きでは、システムの電源等、時間のかかるメンテナンスを行っている。この両日で、私は“コト消費”の強さを思い知った。どのように花と言う“モノ”を買ってもらうかではなく、“コト”を買ってもらうかに注力しないと、多少安くしても売れないのだ。季節の先取りや訪れだけでは、いま一つ、花が売れるという訳にはいかなくなっているのだ。例えば、「伊豆ではもう桜が咲いています」と、室内に伊豆を取り込んでもらおうと、河津桜の花束に一言添える。購入する人は、その花束から春の暖かな自然を感じるだろう。また、もうすぐひな祭りだ。桃や菜花の花束に、お内裏様やお雛様の折り紙をつけ、メッセージを添えて売場の前を通る人にアピールする。通りがかった年配の方が、自分の小さいころに思いを馳せて購入してくれるかもしれない。

 昨年からの特徴として、今迄と違ってきたのは、嘗ては果物と花が同じような価格動向で、野菜が高ければ果物と花が安かった。現在は、野菜が高い時、果物もヘルシーなものと認知され、一緒に相場が上がっている。花は、残念ながら、もうお財布にお金が無くなったのか、売れ行きは良くない。

 服が売れないやら、消費者の魚離れ等を見聞きするが、魚離れは決して離れた訳では無く、お肉を選択する人が多くなっているからだ。また、服の場合には、決して無関心ではないが、ブランド離れがそこにあり、内面的で、人の目を気にする消費から脱皮しつつあるのではないか。人は“モノ”と“コト”にしかお金を使わない。しかし、“モノ”は既に満たされているのだ。そうなると、主体性消費の“コト消費”に、消費者はお金を使いたいと感じる。値段は高いが満足はそれ以上のディズニーランドや、スキー場でも“コト消費”で、かなりの賑わいになっている。主体的に“コト”を起こし、心の中に取り込む、経験する。そういう“コト”に、消費者はお金を使う。ぼんやりした不安や不満があり、何か充ち足りないものがあるのではないか。何かにチャレンジしたい、経験したいのではないか。

 花と緑ではどうだろうか。冬季アジア札幌大会でメダルを取った人は、左手でメダルをちょっと掲げ、右手で花束を振りながら声援に応える。こういう“コト”の小道具として、花や緑を使ってもらう。また、球根切花は、球根付きで出荷され、コップで球根まで楽しむ。小学生の時に使った、ヒヤシンスのガラスの器と同じようなものを使い、球根、根っこ、そして、花を、小さな頃の気持ちになって楽しむのだ。こういったことが、花の“コト消費”になる。ガーデニングや育てる園芸、キッチンハーブから始まって、まだまだやらなければならないことが多い。

 今販売している花でも、積極的にキャッチコピー、あるいは、メッセージを添えて、“コト消費”をしてもらう。花とみどりで“コト”を満たしてもらうのだ。 “コト消費”は、今後とも続く消費行動である。


投稿者 磯村信夫 : 12:43