社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年09月30日

生活する上で優しい自然が不足している


 9月30日、本日は上半期最期の日だ。大田花きでは『第23回かぼちゃ大市』が開催された(当日の様子はこちら)。今朝セリにかかる商品を見たが、何百種類あるのだろうか、みな品種名がついていて、苦労して南北アメリカの人たちが品種改良した、大きさも形も様々なかぼちゃが並んでいる。ハロウィンの本場・アメリカはこんな賑やかな感じで楽しんでいるのか、と想像が膨らんだ。

 東京ディズニーランドと共に育ってきた、日本のハロウィンとかぼちゃ装飾は、成熟期に入っている。従って多様化が必要だ。生産者は種の入手が困難だが、直接輸入したり、あるいは、自分で育種して作る等、努力されている。成熟期にふさわしく、差別化した面白いもの、欲しいものが出来ているので、まだまだ人気は続くだろう。
 
 さて、この上半期での売れ筋は何だっただろうか。今の世の中は何でも満たされているし、欲しいと思っても2、3日すると欲しく無くなったりする位あらゆるものに恵まれ、人々はそれなりの豊かさを享受している。この中において、花きでまだまだ不足しているのは「自然感」である。都市に人口が集中し、身の回りから自然が減ったためだ。だから季節の草花や、特に枝物が根強い人気で、枝物だけの花束でも、日本中どこでも売れるようになってきたのが今年の大きな傾向だ。そして枝物と言えば、海外への輸出だろう。特に中国・香港・台湾・韓国の枝物の需要は非常に強い。ドウダンツツジ等は、この夏大田花きで入荷したものの中での、中国への輸出割合は大きい。この傾向はこれからも続くのではないか。更に、特に十代、二十代の若い人たちにとって、ドライフラワーはステキな花になっている。ネイティブフラワーもユーカリも、ドライになりやすいものだったら今後とも売れていくだろう。

 日ごろの生活の中でいつのまにか足りなくなって、のどが渇いているように感じるモノやコト。それが、花や緑の分野では「自然」なのだろう。これを見つけていくことが、人々を幸せにする花き産業の役目だ。足りない商品の上に、今までのお馴染みなもの、そして新しいもの提供する。親和性と新規性のあるものを世に出していくのだ。例えば「ドライにもなります」という草木は殆どがリバイバルで、30年以上前にはあった花々や、いつのまにか作られなくなったものもある。もう一度、人々が楽しく生きる上でどんな傾向のモノやコトが必要かを、花の分野でも考えやっていくことが必要だ。  
 

投稿者 磯村信夫 11:30