社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年07月17日

猛暑に強い花を消費者に提供する


 大雨の被害を聞くたびに、農家の皆様方の苦しみを分かち合いたいと思っている。天の恵みを受けて生産しているので、異常気象には一番の被害を受けることは、頭では分かっている。しかし、とても必要な産業のうちの一つである農業がダメージを受け、生産を断念せざるを得ないほどの被害に遭われていることを思うと気が気でない。農産物を販売させていただいている市場として、どう復興のお手伝いが出来るかを考えている。卸売市場の各社はみんなそう考えて状況の推移を見守っているし、地元の農協や地方自治体、国はどのように一緒に支援の手を差し伸べるか、出来ることを考えている。

 消費地サイドでは、この暑さでますます鮮度保持対策が欠かせない。一番大切なのは、この暑さの中でも花もちの良いことだ。家庭で飾って一週間楽しめる切花。店頭に並んでから3日以内に販売されるとすると、生産地で切り花してから2週間、短くても12日は花もちする必要がある。もちろん、種苗会社は暑さに強く、かつ作りやすい農産物を、しかも花きであれば、綺麗でアレンジにも使いやすい木姿のものを育種されている。今後も元気で見る人を楽しませるような姿で、花もちの良い遺伝子を持った花を育種してくれることを期待している。しかし、急に多くの品種を生み出せる訳ではない。農協の集出荷場等の鮮度保持対策、運送店の輸送中の鮮度保持対策、共同荷受け所や卸売市場での鮮度保持対策、小売が市場から花を買って店に届くまでの鮮度保持対策、水揚げまで含めた店での鮮度保持対策。これを一連に行うことで、家庭で一週間もつ花を提供することが重要である。「そうはいっても現実は」と悲観的になってはいけない。確かにスーパーの花売り場を見ると、鮮度保持がもっと出来ると思われるところもある。そんな時は我々花き業界が、スーパーの担当者に花の扱いを教えていかなければならない。こういったことを店頭の分野で行っていく。幸い、日本には高い育種技術があり、また、花もちが良い木や葉物、夏の草花、そして、日本で多く品種改良されている菊類等、もちの良い花がある。昨今では、クルクマのように、ガクが花びら化したものも、アンスリウムのようなものも多数出回り、トロピカルな花として珍重されている。こういうようなものを我々花き業界はお届けする責任がある。

 8月のお盆、この時にお墓に添えられた「日本の暑い夏」の菊類、終戦の日の大きな慰霊塔に手向けられた菊を見るたびに、日本の夏の花の役割を想うのである。鮮度保持には電気代もかかろう。設備投資も大変だ。それは分かる。しかし、生活者の健康で朗らかに生きていくことの幸せ、亡くなった方々に、あるいは、我々を育ててくれているあらゆる環境に感謝する、このシンボルが花である。我々流通業者は生産者とともにこのシンボルである花を提供していく責任がある。特に8月のお盆の時期、終戦の月。そういうことを想いながら花き業界は進んでいかなければならないと強く感じている。

 
 投稿者 磯村信夫  12:36