社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年06月19日

物流と生産・消費は一体として考えるべきでは


 本日、磯村はお休みをいただいておりますので、シンクタンクである
(株)大田花き花の生活研究所 桐生所長のコラムを掲載させていただきます。



「物流と生産・消費は一体として考えるべきでは」


 物流のテーマは、新聞で取り上げられない日はないくらい喫緊の課題として注目されている昨今です。政府主催の会議においてもそうですし、各業界における話題としても事欠きません。花き業界においても例外ではなく、フラワー需給マッチング協議会※の物流に関する取り組みも、つい最近業界各紙で報道されていました。全国各地で物流試験も行われるようです。

 ここで物流問題と併せて考えたいのは、消費振興と生産振興です。国内の生産は一都道府県あたり20-40億円くらいのところが多いと試算されます。一方、消費は各都道府県ベースで考えると、切花では年間40-50億円分消費されている都道府県が多いと試算されます。※一都道府県あたりの人口は100万人から200万人ぐらいのところが多く、一世帯あたり平均が2.5人くらい。100万人の人口県は40万世帯、200万人の人口県は80万世帯として推計。東京都や大阪府などは極端に規模が大きいことからこの考察から除いております。

 花きの小売額が生産額のおおよそ2.5倍から3倍という経験値から、各都道府県内では生産額と消費額のつり合いがある程度とれているように見えます。ならば、県内で物流も完結できそうですがそうは問屋が卸さないのです。花きは多品目必要とされるからです。例えばA県で生産されている花きが10品目だとしても、消費は30品目。量ではなく品目数の観点から、A県の生産は消費すべてを賄うことができないのです。するとA県には県内で生産していないが消費で必要な花というものが多数存在し、それらを別の地域から調達することになります。そこで生産品目の多くは中核市場に一旦集められます。全国各地から集まった様々な花の多品目があって初めて花の需要を満たすことができるのです。

 多くの場合、大市場からの転送という方法によります。その際、A県から商品を出荷するトラックの「帰り便」がA県向けの花を運ぶことで往復物流が成り立ちます。コストもつり合いがとれます。その背景には生産と消費があるということです。つまり、物流だけをことさら強調するのはむしろバランスを欠き、物流の問題と生産消費振興は一体のこととして捉えていくことが重要なのではないかと思っています。


株式会社大田花き花の生活研究所
代表取締役 桐生 進



※フラワー需給マッチング協議会:
花きの生産・流通・販売業者で構成。「物流2024年問題」に対応するため、産地からの1運行当たりの輸送時間短縮を目的に、ストックポイント(中間保管拠点)を利用した運送の実証実験を行う。また、生産技術の高度化・産地体制の強化、ホームユース需要等に対応した品目等の転換、新たな需要開拓・消費拡大等に取り組む。