社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年12月18日

昨日の千両市


 今年も後2週間、やり残しのないようにしたい。

 昨日、東京の中央卸売市場では千両市を開催するところが多かった。本年は南天も千両も実付きが良く、上位等級が多い。その為、セリでは上位等級品が潤沢に上場され、例年より安くなってしまった。その結果、需要が底堅い2級、3級の品物の価格も影響を受けた形となった。一方、前日の相対取引では、需給を反映して2級、3級はセリの特級と同等かそれ以上の高値で取引されていた。

 本年の販売結果を踏まえ、需要が底堅い、今の等級で言えば家庭用の2級、3級品を生育出来るような新たな生産方法を生産者と一緒に取組んでいきたい。例えば若松では、いけばなのお生花になる特級品と、3等、あるいはそれより短く細い「カラゲ松」という等級の、家庭用のものを作り分ける栽培体系が確立されており、需要に上手くハマっている。

 日頃の取引においても、枝物は花物と同様、短いものも売れるようになっている。切花で短いと言えばチューリップやフリージア、スイートピー、ラナンキュラス等だが、それでも高値を呼ぶものも多い。このサイズは家庭用のものなのだ。この昨今の需要動向が前面に出たのが、昨日の千両市だった。生産者のこれまでのご苦労を念頭に懸命に販売したが、今後は等級の作り変えを模索しなければならないという結論に達した。

 マーケティングをしていると全てが似通ったものになっていき、最終的にはコストリーダーシップ戦略で分かる通り、「良いものを安く」作ったところが勝つ。生産面積の狭い産地では、勿論、誰に購入してもらうかを考えなければならないが、上位顧客を狙う。あるいは、マーケティングを無視して、「自分のこれだ」と思うものを作る。こういった個性が必要だ。一方、専門店も同様だ。大雑把な試算だが、花きの販売チャネルとしては専門店が2万軒、スーパーマーケットの花売り場が2万箇所、ホームセンターが5千箇所、直売所が2万箇所となっている。また、仏花を含めた家庭需要は、専門店の売上を、量販店等のそれ以外の花売り場の売上が上回った。量販店の売り場が多くなってくると、需要に的確に応えようとする意向が多くなる。しかし、花は嗜好品だ。専門店が個性化、少なくてもセレクトショップ化し、業界を引っ張っていってくれることで、業界の成長を促す。この仕組みを認識してやっていくことが、後顧の憂いがない花き業界の在りようではないか。  
 
 千両市で今後の課題が分かった。生産まで含め、量的に出回っているものはマーケティングをしっかり行い、その姿を変えていかなければならない。少量の品目はまだまだ大も小も、とにかくとがった個性を売り物にしていくことが必要だ。しかし、その中でも色については、未来を感じさせる色、時代の先端を走る色、あるいは季節の訪れを告げる色であることが重要だ。

 
 投稿者 磯村信夫  13:14