社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2020年02月24日

抜本的には、格差を縮めること。


 月末になって、花き市場では中国からの作り榊の入荷が危ぶまれている。また、イベント「さくらまつり」がキャンセルとなり、折角、荷主さんが苦労してふかした特大の桜が宙に浮いてしまった。どのように販売するか、仲卸さんは頭を悩めている。

 原因を作っている新型コロナウィルス問題だが、これが国の差別や人の差別に繋がってきている。何故なら、新型コロナウィルスが“正体不明”だからだ。正体不明だと人は不安に駆られ、理性で物事を判断し、処理することが出来なくなる。感染経路を調査中ではあるが、とにかく正体を暴くことが急がれる。そうでなければ各自の理性が働かないし、予防も最大公約数的なものとならざるをえない。この状況は今しばし続く可能性が高いだろう。
 
 差別といえば、先日、本を読んでいて目にとまった記載がある。今イギリスでは、学歴・教養まで含めた知識、財産、そして、人間関係、この3つを資産とした場合の、7つの階級が存在するそうだ。こうした格差はイギリスだけではない。現在どこの国でも実力主義で、「入口の平等」は必要だが、「結果としての格差」は致し方なしとなっている。だから、世界での大学進学率は高いし、日本を除いたG20の国では、大学院で学ぶことが必須の職業や業種がある。
 
 2018年の名目GDPを見てみると、2000年と比較した場合に約2倍のアメリカやカナダ、インフレ等を加味した実質GDPでは、5倍近くになった中国、約3.5倍になったインド等、いずれも成長が著しい。一方、日本の名目GDPは2000年に比べて約102%とほぼ変わらない。そして、その中でも格差は確実に広がっている。このコラムでもたびたび触れているが、うちの近所に「こども食堂」が何軒も出来ていることも、格差を物語っている。
 
 さて、格差の最も際立っているアメリカでは、11月の大統領選挙の候補者選びが民主党で行われている。現状、左派のサンダース上院議員が、トランプ大統領の対抗馬に選ばれそうな気配だ。格差をいかに縮めるか、健全な中産階級をいかにたくさん国内に育成していくか。アメリカ国民は選挙の行方に関心を寄せている。日本もアメリカと同様、国の方向性を決める政治に、全国民の関心がいかなければならない。年金問題から「若者、中年と高齢者、そして、生産年齢以下の子供たち」と分けがちだが、そうではなく、現実的にはその格差が固定しないようもう一度、入口の平等・チャンスの平等を与えるようにする。花の場合は、現実に商売しているのだから、まずは、現在、社会をけん引している5~10%の人たちにいかにコミットし、自費、経費両方から需要を取っていくかが重要だ。社会が格差是正、格差ではなく多様化・ダイバーシティを認めるにつれ、花や緑の普及、花のある生活が広がっていくからだ。大田花きが尊敬する、とある花の小売会社では、自分のお客様の背景や資産を把握し、花を提案されている。私ども卸売会社の立場である大田花きとしても、その小売店の顧客を選ぶことは出来ないが、まずは「その地の生活者はどんな生活者なのか」を考えて花のマーケティングを行い、納品、販売を心掛けて参りたい。
 
投稿者 磯村信夫 13:45