社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年01月16日

少なくても2020年から違った国際社会となっていることを自覚しよう


 1月22日の旧正月向けの輸出は今日が最後になりそうだと仲卸の人達は言う。中国での検疫で厳しい規制は受けていないか?と訊くと、植物は大丈夫とのこと。2023年新春の観光客や人の往来などのコロナ禍による中国政府の対応はまさに、冊封体制(欄外※)に戻ったかのようだ。この様な目でペスト分析(PEST分析=政治Politics経済Economy社会Society技術Technology)ならぬ今の世の中の諸々を考えてみると、第二次世界大戦後続いてきた平和とグローバリゼーションの時代は終わって、次なる悲観的な世の中に代わってしまっているということを認識して事業を行い、生活しなければならない。今までの人類が進化しあらゆる文明の中で作り上げて来た人権を始めとした価値観では考えられないような戦争がロシアによりウクライナで仕掛けられている。極端なところでは、民間の軍事会社が牢屋にいる犯罪者を兵士として使っていて、しかもこの戦うユニットはロシアの正規軍との仲が悪いので統一の軍事行動で支障が出ているという。この様な事がわかるというのも今の時代で恐ろしい事だが、分かっていながらも人類の叡智で戦争犯罪による差し止めをアメリカなり国連なりが出来ない事に思わずこれも世界を悲観的に見ざるを得ない。

 日本も世界の国々と同様、コロナのパンデミックで大盤振る舞いをし将来観光立国になっていくことも考えてのことだろうか旅行や食事に行くことに補助金を出したり旅行関連業者や食堂の存続を助けている。このパンデミックやエネルギー危機、食糧危機で世界中大盤振る舞いをして先進国はお札を刷り、中進国以下特にドル建てで国債を発行せざるを得ない自国通貨が国際的な信用を得られない様な国ではデフォルトの危機となっている。その小型版で日本でも政府の指示により銀行から無利子で借りたお金の返済ができずデフォルト、倒産する会社や自己破産する人々が多数でてきた。日本もこのタイミングで設備投資をおこなう、これは価値創造をするから良い。しかし給料を上げる、これは本来消えてなくなるものなので慎重を期さなければならないが、この時点で気前良く上げる事が日本社会から期待されている。給料をインフレに負けないように上げることが出来る会社は義務として給料を上げなさいという雰囲気である。

 インフレで家計が大変なのは低所得の人で、その人たちの給料が上がればトータルとして経済が活発化する。しかし、インフレにあまり影響のない所得層の人がむしろ給料が上がっていく対象者になっているので、則ち給料を上げることのできる余裕がある上場会社などに勤めている人達が多いため、ここで二極化が更に大きくなっていく。この様に治安の問題まで含め世界の、日本の社会は今までそれなりに平和で共に成長をしてきた戦後78年は終わったと見るべきで、これからはより悲観的な難しい時代になってきているということなのであろう。

 花も、コロナ禍で若い人も買う様になり、ファンもできてきたのだから、可処分所得まで含めターゲットをもう一度見直したり確認をして、相応しい価値と価格帯のものを届けなければならない。天候とて極端で、日本は地球温暖化でアメリカと同様G7の中で経済的に最も影響を受けている国であるため、グリーントランスフォーメーション(GX)を実行しなければならないのだが、現時点でロシアの天然ガスの供給がままならないためEUではもう一度石炭火力電力を使うという判断をせざるを得なくなっている。しかしCO2の削減の取り組みを諦めたわけではない。グリーンインフレーションという事も言われ始めている。借金財政の国が世界の大多数となってしまっている現在、どの様にグリーン化と折り合いをつけるか、この辺りも新しい悲観的な時代が始まったという事を前提に考え併せないといけない。

 G7の中だけでも岸田総理は根回しのためにメンバー諸国を事前訪問しなければならないわけで、これが国連の中となると統一意見が出るという事は期待してはならない、ということである。多様性とひとことでは片づけられない判断や事象が今後共多く続く可能性が高い。

 花き業界とて、ことを前に進めて行くためには、今までとは違う世の中になっていること、そして悲観的な見通しを持つこと、更に悲観的な見通しをも心構えとして用意しておくこと、こういう計画をたてながら一方に明るい未来はある、と考えて進まざるを得ない。サプライチェーンの国産化や価値観を共有する国との政治的、経済的、情報的および軍事的繋がり、全ての国と仲良く価値観を共有するという事が難しくなっていることを前提に優先順位をつけながら物事を解決していくということであろう。


※冊封体制
紀元前206年頃の漢時代~19世紀末の清時代まで続いた中国の体制。中国皇帝を頂点とし、周辺諸国の支配者との間に君臣関係を結び成立させた国際秩序のことで、周辺諸国の各地域を支配する君主が、中国皇帝の徳に敬意を払う証として、貢物をおくる朝貢をもとに、これに中国側が返礼品や位階を授けることで上下関係を伴った外交関係として成立した。




投稿者 磯村信夫  17:41