社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年07月31日

小売店に優秀な若い人財を


 先週、生花店の方々が集う勉強会「ナルシス会」が久しぶりに開催された。20世紀末に立ち上げたので、もうかれこれ20年を超える。従って、会員九名の中でも、60歳を超えた人が二人もいる。食事をしながらの会合で話題になったのは、主に次の2つだった。生花店の社会的地位は上がったか。そして、若い人に花き専門店業界に入ってもらい、生花店を活性化してもらうにはどうしたら良いかだ。

 1つ目の「生花店の社会的地位は上がったか」について。なんとナルシス会メンバーの殆どが若いころ、「『花屋』と呼ばれるのは癪だ。『花屋さん』、『お花屋さん』と呼ばれたい」と思っており、そしてそれを実現させることが、自分のやりたいことだと思っていたそうだ。日比谷花壇さんや青山フラワーマーケットさんはじめ、かなりの数の人気店が一流の場所にも出店する一方、地元密着で大衆に受け入れられる生花店もある。このように日本全国で様々な花屋さんが活躍している。ナルシス会のメンバーは勿論のこと、花キューピットの会員の方々の功績は本当に素晴らしいと思う。「人に花で幸せになってもらうことを目的に存在している生花店が汚かったり、卑しかったりしてはならない」というところから、言うなれば6S※の向上を目指してナルシス会という勉強会も発足されたわけで、20年振り返ってそれぞれ語った。みな一定のところまでできたと思う。ここまで来たので、さらに人間的に素晴らしくなること、そしてそれぞれのお店の従業員が「花屋さんに勤めていて本当に良かった」と思えるよう、物心ともに処・待遇の向上を目指してさらに活躍してもらいたい。

 話題の二つ目、若い人たちに入ってきてもらうにはどうしたら良いか。これは加点方式の評価と教育でほめる。積極的に任せる。ここに尽きるのではないか。人手が必要な時、一人でも二人でも地元の大学や専門学校、高校に採用募集をして欲しい。採用の際、どんな人でも良いは語弊があるが、とにかく素直で元気な人を採用してもらいたい。何故かと言えば、元気な人が花を取扱うと花から沢山のことを教わって、その人の素晴らしい部分を花が引き出してくれるからだ。私は長年の経験からそう思っている。そして入社したら(たまたま長期アルバイトでも)、技術も心得も、あらゆることを店のご主人や先輩は教えなければならないが、そこでの権限や、あるいはコンテスト等のチャンスを積極的に与えていくことが必要になる。それが生花店の場合、いや、花き業界全体で言えることだが、上手くいっていないのではないか。加点主義で物事の評価をする癖をつけていないのではないか。任せてほめる、これが足りない。そして、花き業界には色々な学歴、経歴の人がいるが、「守破離」の“離”のところまでは、その人の特性を生かしたアプローチで教育を進めるべきだ。階段やはしごのように一直線に登っていくのではなく、ジャングルジムのように、「この人の特性はここだから、ここから登っていこう」というような成長の方式が必要だ。更に、思い切って任せて経験を積んでもらう。例えば、花束を作る、榊を作る。こういうこと1つとっても経験である。このような形で店のご主人は積極的に人を育てて欲しい。そして、良い生花店の責任者になるべく、技術は勿論のこと、考え方、収支の合わせ方等々学んでいく必要がある。

 1970年代から80年代、場合によってはバブル崩壊後の90年代にかけて、各お店の責任者は社員教育を行ってきた。社員は一人前になって独立し、フローリストになった。もう一度その頃を振り返って、自分のお子さんだろうが従業員だろうが、前述したような教育を行っていくべきだと思う。そうすれば、今の日本の生花店レベルを保って、あるいは更に高いレベルになって、地域のお客様に素晴らしい花を届けて幸せにすることが出来る。花き業界はお花屋さんが先頭に立って引っ張っていく。その後に各業態の小売店が続く。そういう構造になっている。是非とも、「自分たちが素晴らしくなければ、花き業界は他の産業に遅れをとってしまう」という、矜持を持って進化して欲しい。


※6S…大田花きでは、5S+1を目標にしている(整理・整頓・清掃・清潔・躾・作法) 。  


 投稿者 磯村信夫  11:51