社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年02月06日

小さな会社も異動の時に参考にしてください


 新聞を見ていると社長の交代の記事が目に付くようになってきた。3月末決算の会社では4月から新年度が始まるのでその予算は出来れば新体制の中で作成し実行してもらいたい。そのためには、主だった人達の異動は2月の中旬くらいまで、一般社員に至っても少なくても2月中には決めておきたいというところであろう。

 人事異動の時に社内でよく言われるのは、夏目漱石の草枕の冒頭の文言の「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」である。しかしスポーツチームのトレードと同じように目標達成や勝つために適材適所の異動が必要であり、住みにくい世の中だがそれでもプロとして、この場合はサラリーパーソンとして、特別の場合を除き、上司は異動を心掛けなければならない。

 異動をさせる時の基本はいくつかある。ひとつはパレートの法則である。これは、言われなくてもやる人が2、言われたことしかやらない人が6、言われたこともやらない人が2、こういう比率で存在しているという統計学である。だからチーム全体が良くなるためには言われたことしかやらない人の上3人を自発的に進んで仕事をやるようにさせると、中下の3が自分と同じような人であったのが、ボーナスなども上がり影響を受けて積極的に自分の事のように仕事をやるようになる。こうして組織は良くなっていく。だから言われなくてもやる人の2を適切に配置し、異動させ、中上の言われたことしかやらない人を上の方に向かせる手立てを考える、或いはそういう人を上に就けるか、中上を異動させる。こういうことが欠かせない。これが手法の一つ。

 社員によって仕事を責任としている者と作業としている者がいる。責任としているものは将来の取締役の候補であるから、重要な仕事に異動させる。作業として見ている者はマンネリ化しやすいので最低でも5年同じことをやると3年目くらいから生産性が落ち、時代についていけないなくなるので取引先を逃す。よって、最低でも5年くらいで異動させる。異動先部署が少ない小さな会社においてはこの場合、担務や主に行う業務内容を5年くらいで変える。

 社員は人により、成功は皆のお陰、失敗は自分のせいと感じている人がいる。こういう人間は人間が出来ており、優しい中にも芯があるのでより大きい仕事をさせる。体だけには気を付けさせ一つの仕事の区切りがついたら次のところへ異動させる。そしてこの人間も会社を担う人の候補である。

 最後に優秀な社員が辞める事がある。それは先輩やその組織の直属の上司の能力や人間的魅力が低いからである。優秀な人ほど優秀な人と働きたいと思うからだ。優秀な部下のいるところに優秀な人間を配属する。そうすると共に育って会社に良い影響と利益をもたらす。

 以上の通り異動の時にいくつか心掛けているのだが、これらの事で最も大切な事は、仕事はその人の能力を開発する事よりも人格を磨くことの意義の事の方が大きい、という事である。仕事をしていてその人が人間的な魅力を身につけているか。例えば弊社なら、フェアーであることをとても大切に考えているので、フェアーな判断が間違いなくできているかをポイントに異動をしている。言われたことしかやらない人と言われたこともやらない人は、あくまでも「仕事において」であり人格とは切り離して考えている。言われたこともやらない人とは命じたことをやってはいるが上っ面だけやりとにかく浅いということ。次にパスをする相手が喜ぶように一手間かけて渡すことをせず狭い範囲内の仕事しかしない、これで十分だ、と思う人である。そういう人も人格が劣る、等とは一切考えない。そういうやり方をする人として見るだけで、仕事から離れたら良いご主人の役割や良い父親の役割を演じていることであろう。或いは役職者になれなくてもコツコツやっている、その事でも人と比べているものではないので達観して立派な人生を送っているといえるのではないか。だからあくまでも仕事上の事であり人格とは関係ないと思うことにしている。仕事上の役割だけの事なのである。

 以上が人事異動の際に考えていることである。ぜひとも皆様方、花き業界の会社の人事異動に参考にと思った次第である。




投稿者 磯村信夫  14:00