社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年10月24日

家庭需要を定着させる、本番はこれから


 スーパーマーケットでの生鮮食料品の売れ具合を見ていると、花き業界がコロナ禍で家庭需要が増えた、といっていた時と同じであった。withコロナで、イベントや結婚式、葬儀は小さくなり家族葬だが、親しい友人たちがもう一度偲ぶ会をやるところも出て来るなど、集いがコロナ前に戻り、家庭需要の生鮮食料品の売上げが落ちて、お惣菜は増えてきた。この事から普通にコロナ前のライフスタイルに戻って来たなと感じる。花も同様で、家族需要が今までの勢いがなくなり、結婚式、葬儀、週末の法事、プレゼント、発表会などの需要が増えてきている。そしてここにきて、外食、旅行などに関しては、ここ大田市場は羽田のすぐそばで、モノレールの混み具合を見ていると、旅行の荷物を持った人たちがとても多くなった。旅行については完全にコロナ禍の反動でたくさんの人が行き来している、というのが分かる。加えてデパートの売上げがずっと前年を上回っているので、リベンジ消費なのか高級品も良い様だ。そうなると、小売りのチェーン店舗を見ていても、大規模な面積の店は、当然常連の花好きのお客様は、自宅用にもプレゼント用にも沢山買ってくれるし、プラスギフト目当てでこだわった花束を買いに来るお客様も多い。そこの大型店では、レストランのいけ込みやホテルのいけ込み需要もある。大きい店舗は、デパート同様良いが、一方、地元密着型の小規模店舗は客数と総売上げ共前年より下がっている。そして園芸は、鉢物などが去年より売れなくなってきており、花瓶の売れ具合も伸びは止まった。これらの事から10月に入って、コロナ前に戻った感がはっきりしてきたのだ。

 さてここで、花き業界において依然と変わらないのが、供給不足だ。生産の経費が本当に高いし種苗費も高い。天候がおかしかったので、球根など不作の物もある。

 せっかくコロナ禍で鉢物、特に観葉や苗物など売れる様になり、家庭需要が若い人や一人世帯にも広がり、花を飾る事が習慣化してきたのに、今週はお天気がいいし外に出るからやめておこう、と需要が今のところ落ちている。相場は高いが、街の小売店舗もスタイリッシュな専門店もスーパーの花売り場も我慢をして品揃えをしておいて欲しい。今は、政府が補助をしてくれるので、旅行も宿代も本当に割安に行ける。しかしこれがずっと続くわけではない、もう一度コロナ禍真っ最中の様に分断され個別に生きるという事はないが、家での生活をリフレッシュのため過ごす事の大切さは必ず感じてくれているはずだ。だから冬になって早く日が暮れ、寒くなって家での灯りが恋しくなり、帰宅しほっと落ち着くその時に、そこに花がある、という生活が戻ってくると思う。ここで初めて家庭需要の定着だ。

 僕が心配しているのは、冬になり、一人世帯の人が街に出なくなって一人孤独に部屋にいる事だ。孤独は自律神経内交感神経が勝ち過ぎて、結局は他の人を見ても、友達すら心を許せると思えず壁を作ってしまう。「攻撃」は言い過ぎだが、壁を作って「逃走」し、リラックスする副交感神経が働く事を妨げる。でもその時花があれば、花は自律神経を整える事を助ける。是非とも忙しくても、孤独は現代の病気を誘発するため、花屋さんで花を買う、或いはサブスクで2週間に1回で良いから花を定期購入するとやってもらえれば、一人でも孤独ではない、繋がっているという事が分かり感じる事ができる。その人にもご両親、ご兄弟、職場の仲間もいるはずだし、そういう人達の事を想いながら花のある生活をしてもらえればと思う。そしてそんな一人世帯の人も、気兼ねなく出入りする場所で花を売って欲しい。買うのはハードルがあるかもしれないが、是非とも孤独な人にほど、花のある生活をして欲しい。

 


投稿者 磯村信夫 16:53