社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年05月01日

大田花きがいただくのは、物流費プラス委託手数料8%


 先週の木曜日に、今シーズン最後のスキーへ行った。前日には標高2,000メートルの場所に雪が降ったので、新雪を楽しむことが出来た。昨年とは違いたっぷり雪があるので、場所によっては7月までスキーが出来そうだ。

 スキー場へ行くと、団塊世代以上の人が平日に多いことに驚く。中にはご夫婦でスキーを楽しんでいる方々もいる。日帰りでも、スキー板は宅配便で送って手ぶらで来ることが出来る。また、今はヘルメットを着用する人が半分近くいるので、以前より荷物も増えた。従って、スキーというと宅配便のお世話になる人が多いのだ。これでは、本当に運転手さんの数が足りなくなるのも頷ける。

 ヤマト運輸の運賃値上げがマスコミで取り上げられているが、労働集約的な運送業で20年以上も運賃が値上がりしなかったのは、先進国では異例のことだ。1991年のバブル経済崩壊・ソ連邦崩壊で日本の所得は下がり、工場は海外に移転しデフレとなった。運転手さんたちの所得も同様に下がっているが、平均年齢は非常に高く、上がり続けている。現在、デフレがストップしたと言い切れるだろうか。マイナス金利で金利がつかないから、タンス預金がたくさんあるという。また、企業は設備投資をしない。不活発である。こんな日本に誰がしたのか。総論賛成各論反対。我がこととして身を切る努力をしないで、ずるずるとゆでガエルでこうなった。経済政策で「普通にする」ということは、緩やかなインフラ政策をするということだ。企業は積極的に設備投資するということだ。海外から会社に来てもらうことだ。そして、働く者は、生産性を上げること、生活者にお金を出しても良いと言ってもらえるように、モノやサービスを作ることだ。世界から見て、日本はこのことを怠ってきたようだ。もちろん、一生懸命やってきたつもりでいる。しかし、考えが足りなかったり、お客さんに過剰なサービスをしてきてしまった。ここが問題だと思っている。そして今、いよいよ人手が足りなくなってきた。eコマースが本格化し始めた今、運賃を上げ、賃金を上げて良い循環にする時だ。

 花き流通について考えてみよう。自分のことで恐縮だが、私ども大田花きはこの4月より、ご利用頂く皆様に仕事の対価として場内物流の一部を明確にしていただくこととした。現在行っている作業サービスを4つに分け、ご利用される要望に沿って一つ一つの作業サービスに対し、メニューを作り、受益者負担を願おうとするものだ。一つは商流で、委託品の手数料率を9.5%から8%へ変更した。受託品販売以外の買付集荷という商流もある。そして、2つ目は、物流に関してのサービスだ。一番多い生産者から委託品出荷の例を取ると、場内物流代の一部として、輸送容器兼販売容器が、弊社の自動物流装置で対応出来るものは50円、対応出来ないものは100円をいただくこととした。大きな箱から出して小分けするという作業を、アクティビティ・ベースド・コスティングに基づき、一口あたり100円頂戴する。いわゆる、「手渡しするもの」における物流費になる。切花も鉢物も、花きという括りで同一であると考えているので、バケツ輸送の切花や鉢物がこれにあたる。但し、苗物は販売単位が1トレーあたり3,000円以上するものというのはあまり考えにくく、カサばらない。従って、例外的に1トレーあたり50円としている。

 ここで、皆様方にメッセージとしてお伝えしたいのは、花き生産流通の本流は売れ筋に絞り、売れ筋を大ロットで生産流通させることの必要性だ。ネスレではチョコレートは「キットカット」を中心に生産している。売れ筋であればロットをまとめられるのだ。多様化の美名の下、死に筋をも安くならないよう販売する。だから、小ロットになったものも少なくない。これらの生産の手間も箱代も運賃も入れると、もうペイしない所まで、生産流通は来ている。これを見直し、売れ筋を8割に、2割は研究・開発用の新品種を作って流通させて欲しい。

 3つ目はマーケティングリサーチや、新しいものを一緒に作っていくという情報知識(情報流)だが、現在は委託手数料に含まれている。但し、大田花きにご出荷頂けていない産地は別である。

 最後に4つ目だが、資金の流れについては、卸売市場に入場する卸売会社なので、出荷者からお預かりしている売立代金はいの一番に、どんなことがあってもお返しする。買参人に対しては、期日までに支払われなかった場合、即刻取引停止だ。また、今のところ資金流で金利を頂くことはしていない。しかし、これも、花きの支払いサイトと一般社会の支払いサイトが違うこともあり、一部の会社は長めの支払いサイトで金利を貰いながら運用していることもあるかもしれない。「支払いを待ってくれ」と言われた先から延滞利息を貰っている卸会社もあるようだ。決済については、銀行と同様に、卸売会社もとても大切な作業サービスである。

 現在、参議院で審議されている農業競争力強化法案で、「市場外流通」という言葉は過去のものになっていく可能性がある。しかし、日本の鮮魚、青果、花きは圧倒的に市場流通しているし、市場流通が優れていると思っている。そして、卸売市場には特別な能力がある。それは、品物の目利きが消費の現場を知っているということだ。生鮮の本物を買ってもらう為にはどうするか。そこから仕事を組み立てるのが「普通」の仕事のやり方だ。ここに向けて、どのような能力を生かし、どのようなモノやコトで対価をいただくか。結局、花き業界の主役である生産者と消費者、準主役の小売店に、効率よく、役立つモノやサービスを提供出来た所が生き残っていくのだろう。

 ヤマト運輸やアマゾンの経済行動をつぶさに見るにつけ、我々花き業界人は中小零細企業の集まりだが、志を同じくする者同士で、しっかりしたサプライチェーンを創っていく必要がある。



投稿者 磯村信夫 : 16:57