社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年12月23日

変化して生き残る


 本日23日(月)は昨年まで「天皇誕生日」の祝日だったため、パーティーやギフトでクリスマスが盛り上がる要因となっていた。それが今年からは平日である。ドラッカーが言うように、企業の基本的な機能は「マーケティングとイノベーション」だ。クリスマスの時期に、どのように花束がプレゼントされるのか。家庭にクリスマスツリーをはじめ、花き類をどのように飾ってムードを盛り上げてもらうか等、早い時期から企画していた。しかし今、日本の小売業は厳しい現状だ。23日が祝日ではないので盛り上がらないことを前提に、ブラックフライデーからはじまり、通販業社は特別なセールを行い、小売店大手は創業感謝祭等を行った。だが、肝心のクリスマスムードの盛り上げは、残念ながらいまひとつであった。それと併せて、曜日巡りの悪さと天候不順、そして、団塊ジュニア世代・その子ども世代が一定の年齢になり、祖父母を呼んだホームパーティや、ママ友を呼んだホームパーティをしなくなったことも、この時期に盛り上がりが欠けている要因ではないだろうか。この盛り上がりのなさを来年どうするか。検証して、早めに取り組む必要がある。

 この盛り上がりの無いムードは、取引の現場にも現れている。人通りの多い場所で店を構える生花店は、クリスマスと正月用を本日同時に仕入れているが、それ以外は、年末のものを仕入れているといえども、積極的に販売しようとする仕入れ動向ではない。今、売れていないので元気がないのだ。産地の期待値からすると、相場も鳴かず飛ばずのものが多い。また、家庭需要の花は、専門店よりスーパーマーケット等の量販店で購入されることが多くなった。従って、小売価格が一定に決まっているため、そこから逆算された、抑えた仕入れ価格となる。一方、繁盛している専門店は、青果や水産を見ても、チェーン展開している小売会社の場合が多い。ここでは、出店している駅ビルへの売上高別家賃や、本部経費を支払わなければならない。これを逆算した仕入れ価格とするから、小売価格に対し、三分の一くらいが生産者の手取りとなる※。さらに、20世紀の間は、パパママストアの生花店が圧倒的に多かった。もちろんそこには従業員もいただろう。しかし、仕入れて売る。経費を差っ引く。そして、それをみんなで分かち合う。経営が困ったら社長は給料を取らずに、会社に貸し付けたことにして会社を切り回す。こういった店が多かったため、物日で売れるとなれば、高く仕入れもした。しかし、その時代はもう終わった。
 
 このような現実から、もう一度時代の需要に合わせた生産方式や、出荷方法をしていかないと、生産者の手取りが減ってしまう。小売価格を想定し、逆算してどういう荷姿にしたら良いのか、出荷調整費や運送費を下げるにはどうしたら良いのか。事業としてしっかり捉えた生産出荷を行う必要があるのだ。
 
 「花」というコンテンツは、紀元前から人間にとって魅力のあるものとして今後とも変わらない。その意味では、現在起こっている第四次産業革命の中でも、花きを取扱う我々の業種は、形を変えながら生き残っていくだろう。しかし、メインプレーヤーの交代が誰の目にも明らかになり、時は容赦なく変われなかったものを振るい落としていく。それを如実に表したのが2019年の青果、水産、花きの市況である。花の場合も、消費者が利用しやすい小売の業態は何か、どんな中間流通業者が取引方法や施設まで含め、今の時代に合っているのか。これが明確になった。生産地も同様だ。鮮度保持流通を行うこと。周年契約取引が出来るようにすること。自分のところで一年を賄うことが出来なければ、気象条件の違った産地とチームを組むこと。業態による出荷スペック、単価、納期をそれぞれ明確にして品種まで選定し、生産体系を変えていくこと。産地の農協や経済連などの集出荷所でも、新しい機能が求められている(これは先週お伝えした通りだ)。
 
 52週初日の本日は量が出てきたが、今週で本年の市場取引はお終いなのに、明日から前年と比べて入荷量が少ないまま今週を終える。天候被害が多いというよりは、花き業界が一丸となって変わることが出来なければ、頑張っている人たちを除き、時代にふるい落とされることが分かった2019年であった。これでは情けない。生産者と消費者に喜んでもらう。次に小売店に儲けてもらう。ここに向けて、JAグループ等の産地流通業者も消費地の卸・仲卸も注力する。もちろん、主役、準主役の生産者と小売業は時代の要請に応えるべく自分の仕事を変化させる。これが目標の2020年だ。
 
 ※アメリカやヨーロッパでは、25~28%が一般的だと言われているから、日本はまだそれよりも少し多い。
 

投稿者 磯村信夫 13:20