社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年07月22日

売る人を育てる


 先週の18日、神奈川県伊勢原にある大山に、大田花き睦講で阿夫利神社に豊年満作を祈り、お詣りしてきた。

 大山講は魚河岸、青果市場の関係者の講が多く、大森園芸時代から続いている大切な夏の行事である。現在、先達師は浅田氏にお願いしてあり、今はもうケーブルカーが運行されているので、阿夫利の大神様への取り次ぎと、終わってからその家で直会をするのが恒例となっている。大山に行く道すがら、国分寺のはなひろさんと車中で話していた時、私としても身につまされる話を伺ったので、ご披露したい。
 
 国分寺のはなひろさんは現在5店舗まで出店しているが、お父様が亡くなった後、弟さんを独立させ、別々の会社を作り、それぞれの店舗管理をするようになった。今も言った通り、現在5店舗まで来たが、はなひろさんは、まず人づくりをして今後とも出店するという。どういう人づくりか、ポイントはというと、「花を販売する社員を育てる」ことだという。質問してみると、「自分が仕入れた物を店長に届け、店長は水揚げしたり、小分けしたりして配列する。これでおしまいになってしまわないようにすることだ。そこまでが売る準備で、売りはそれからだ。だから、どうすれば売れるのか、どのように声をかけるのか、店の前を通る人に注目してもらうのか。お盆の時、週末のホームユースの時、どこに需要があって、どのようにお客様に働きかけて販売していくのか。固定客は、そのうちロイヤルのお客様は、一度も購入していない店の前を通り過ぎるお客様は。チャンスはあるのに、準備だけして何もしないというのは他業界ではありえないが、花き業界はそうしてきてしまったのではないか。」はなひろさんは、その準備、まず売るということが小売りの大切な役割だというのである。「働き方改革もあるから、規定時間内で目標を日販10万円、少なくても7~8万円売って、3,000万円以上の売上を作っていく。こういう社員を育てていこうとしているのです」とおっしゃった。

 我々花き業界がやらなければならないのは、受け身や待ちの営業体制から、積極的に営業し、売上利益を取りに行く。物やサービスを提供していかなければならない。まず、そこからだと思う。その時に二つ考えなければならない。一つは、BtoCであろうがBtoBであろうが、自分が作る物やサービスに独自性があって、取引先や相手に便益を供するものであること。もう一つは、コミュニケーション能力である。お客様や自分の取引先に、どのようにその商品を理解してもらい伝えるのか。POPやチラシなら、ほとんどお金はかからない。自分の方に振り向いてもらい、理解してもらうことをやらなければならない。やり方は、常連客と一度も利用していない人とでは違う。そこを明確に分けてコミュニケーションする。1ケ月に1回の人に2回買いに来てもらう努力をしたか、1回に2倍買ってもらう努力をしたか。店に置いてある花の独自性や利便性、すなわち、花が持つ「明るい雰囲気になってジメジメした気持ちが吹き飛んでいき笑顔になる」とか、まだ利用したことがないお客様にきちんと伝える努力をしたか。このような努力をして、前年比100%になる。努力しないと、待ちで90%、せいぜい95%、そういうことだ。

 普段のお客様に固定的に来てもらうようにする。そして、花は買っているが、自店で買っていない人を捉まえる。あまり買っていないであろう人にお客様になってもらう。そこが、はなひろさんの売る努力だ。それは市場も仲卸も一緒だ。揃えて終わりではない、揃えたところから始まる。売る人を育てる。このことは我が花き業界に最も欠けていることの一つであった。
反省。



投稿者 磯村信夫 15:20