社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年07月18日

国や地方自治体からの過度な援助を期待してはならない卸売市場業界:PFI※


 大田市場の花き部では、20世紀の最後、大田花きが物流棟を建てる際、まだ、PFI法ができる前だったので、大田花きは物流棟を建てて、都に寄付をし、使用料を払って、使わせてもらうという形をとった。その後、21世紀になってから、フラワーオークションジャパンさんが、本棟に隣接した荷置き場荷捌き場兼会議室の建物を作った。この時にはPFI法が施行されていた。また、これ以外の施設として、大田市場花き部全体が狭くなったので、有限会社花き施設整備という会社を卸2社で作り、本棟場内の混雑を緩和するため、当時の仲卸大手4社、関連資材業者が会社の一部を移転した。卸売会社の搬出場所と保冷庫、地上と屋上には関連運送会社の駐車場を花き部北側の広い土地を都から20年契約で借りて、しっかりとした建物を作った。大田市場の青果部もそうだが、花き部は、日本中あるいは、世界中の出荷団体や、それを輸入する商社の利用があり、そして買参人と言われる仲卸や地方の卸売市場、直接買参の大手小売店もいれば、仲卸とチームを組んでいる大手量販店もいる。大手買参人が、ますます大田市場を利用するようになったのは、卸売会社が流通上必要な機能を装備する場所をもったこと、市場の場所・面積を広げたためである。

 具体的には、豊洲市場の魚と同じような役割が、大田市場の青果部と花き部にあるので、大田花きにしてもFAJにしても、スペースを広げ、必要な場合には、物流機器を入れた建物を建て、荷受けだけではなく搬出の場所を作るなど、入場業者として卸が努力して拡張してきた。そうそう、言うのを忘れたが、花き部の南側に港湾用地がある。高速道路の下なものだから、花き部用地に編入せず、東京都の港湾用地のままである。買出人の駐車場と、搬出の場所、空台車の置き場に使っている広いエリアだ。大田花きが物流棟を建てる前から卸と仲卸が共同して、港湾用地をお借りしている。このように、中央卸売市場の大田市場花き部は、卸が、自らスペースを広げ、合理的な仕事をするための施設や建物を自分で建ててきた。もちろん、計画をして、国、東京都から補助金を頂き、建物や設備を作っていくという手法もある。しかし、都や国が行うと予算を組む関係で時間がかかり、しかも、事業目的にあった頑丈さや、安全性よりも、さらに過大なものになったり、建築費他が高くなってしまうことが多い。したがって、大田市場では、ここのところ仲卸の屋根掛けは、都に作ってもらったが、大田花きの花ステーション、物流施設、定温庫、低温庫などの設備は大田花きからすると巨額の投資であったが、自分で建てようと決めた。おかげさまで、定温物流が当たり前の時代になり、少なくとも、一般の社会で定温流通が必要とされるものには、大田花きでは全部ではないが施設が整ったことになる。しかし、これからも、地球温暖化対策施設や人手不足による無人化、ロボット化と5Gに合わせて生産者から小売店のサプライチェーン上の情報ネットワークを作らなければならない。資金の手前十分とは言えないが、自前でやるというやり方は、予算枠を取ってくれる国の卸売市場室に対して、失礼なやり方なのかというと、決してそうではない。国の財政は、今後ますます厳しくなる。一年で収支を合わせる、いわゆるプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化も、今のところまだ2025年度を目標としている。新型コロナやら、物価高やら、国防費、前回もお伝えしたが、日本の周りは、中東以上に厳しい安全保障状態ではないか。実質、平和主義というのは、アメリカと同盟関係を結んでいるだけでは足りず、自国は、自分で守る。そこまでの努力が、現実の問題として必要だ。

  こうなると、やはり、公設市場、中央卸売市場も民営の地方卸売市場同様、自分で設備投資をし、時代にあったサービスレベルを行えるようにしなければならない。生産地・生産者・農協の集出荷場・全農などの情報システム決済システムにしても、卸売会社・問屋・仲卸・小売店・運送店・倉庫会社にしても、自前を旨とし、投資をする。そして、一番大切な問題は、優秀な人を雇い、会社のために働いてもらうということだ。すなわち、花の場合は、仙台で中央卸売市場の第一号ができた1973年以前の時代、なんでも自分でやっていこうとする意気込みに立ち返って、自分の役割を演じていくことになる。これが、各市場、老朽化で建て替えが叫ばれている卸売市場業界と流通業界の国や地方自治体の援助の有り様である。すでに、公設市場や中央卸売市場で、民間の企業だったら考えられない援助をしてもらった経験がある卸売市場がある。その市場もこれからは、自分たちでできる範囲内でやる。その心意気がないと、生鮮食料品花きの生産流通はやっていけない、ということに今後ますますなっていくのである。



【追記】BOOの考え方は卸売市場関係は今後とも市場運営をしてゆくときの基本的な考え方になることを前提にしてほしい。

※BOO:Build Operate and Own
民間事業者が公共施設の建設を行い、維持・管理・運営し、国や地方公共団体へ施設所有権を譲渡することなく、事業期間終了後に解体・撤去する事業方式
(BOOはPFIの事業方式のひとつ)

※PFI:Private Finance Initiative
国や地方自治体の土地、あるいは公共の場所で、施設の建設・管理・運営を、民間事業者の技術や資金、経営スキルなどの活用によって行う事業の手法

 

 


投稿者 磯村信夫 17:24