社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年01月30日

品評会で日本の花の質の高さに誇りを感ずる


 このところ週末にイベントに出かける事が多い。大田区立郷土博物館では大田区の花き園芸の歴史の展示会が開催されている。札幌花き園芸の先々代社長の綱木さんは、札幌のお花屋さんだったが、蒸かしものを習おうと室に入れて促成栽培をして花を咲かせる技術を、大森の旧東海道美原通りにある花房さんに勉強に行って習ったという。そう、蒲田は花桃や雪柳そして一部紅切の促成花木で有名だったところだ。この様に蒲田は花き園芸への感心が高かったため、後に球根輸出(鉄砲百合、鹿の子百合、山百合)で成功した横浜植木が、堀切菖蒲園に並び賞されるだけの蒲田菖蒲園を開いた。田園調布に温室があり、天皇に続いてイギリスに留学した男爵子爵は、イギリスで習った温室園芸を日本に戻って田園調布で開いたのである。 

 そして大田区の3か所めは、文士村で有名な馬込で、明治時期に新しい花き類がたくさん導入された中のひとつ、シクラメンは今でも作られており馬込のシクラメンとして一都6県プラス福島の生産者のお師匠さんとなり研修生を教えシクラメンを広めた。現存する大田市場大田花きも花の種苗商「不休園」の子会社として日本で初めての鉢物市場として昭和7年大森駅のところで開場されたわけだが、なんといっても汽笛一声新橋~の時に、新橋、大森、鶴見、横浜と、大森に電車が停まり駅があったという事は文化的にもとても大きなことであった。

 そして、その翌日関東東海花展。日本で最大規模の岐阜三重まで含めた関東東海圏の生産者の品評会が池袋サンシャインで行われた。池袋サンシャインはかつての巣鴨プリズンの後に建てられたランドマークタワーで広い展示場のスペースに、関東東海から選りすぐりの花が出品され、しかもフラワーデザインのコンテストも行われた。そしてその質は世界に冠たるものであった。

 大田区の花き園芸歴史の翌日に巣鴨プリズン跡地である池袋サンシャインで平和のシンボルである花のコンテストを見たわけだが、改めてもう一度、江戸時代から続く特質すべき花き園芸文化の担い手である日本は、メイドインジャパンの花をもっと量的に日本の生活者に観てもらわなければならない、と考えた。花だから国防上のカロリーベースで食料安保というわけではない。しかし、日本は奈良時代から花き文化が興りその質の高さは切花、鉢物、植木、生け花、庭、或いは嵐山で代表されるランドスケイプまで含め本当に世界に冠たるものがある。故にこれを更に広め、国内の花のすばらしさをまず日本国内の生活者が満足できるだけの量、次いで世界一のものが多いので輸出をして更に花き園芸を盛り立てていかなければならない、と考えている。

 そういえば、バレンタインデーが近いこともあり旧正月終わったというのにスイートピーをはじめ春の花の輸出が本格化している。寒さで入荷が少なく卸売価格も上がっているが輸出をしている仲卸業者はもっともっとと買気旺盛である。これは結局質が高いという事に尽きるであろう。円安で競争力があるというのも一因かもしれないが、やはり世界のとびっきりが日本の花であるためである。関東東海花展で入賞を逃した品を見てもレベルが高いのでちょっとした欠点、これは自然の恵みだからこのぐらいは、、、と思うのだがそういった点で入賞を逃した。でも見るからにはつらつとして輝きのある花ばかりであった。

 今後共、日本の花き生産を活性化するため市場(卸仲卸)は消費地の小売店と共にまた県や国をあげて応援したい、と思って展覧会を後にした。




投稿者 磯村信夫  14:30