社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年04月30日

卸売業と卸売市場の存在意義


 母の日間近だが、いよいよ、国産トルコギキョウの全盛シーズンとなってきた。現在のトルコギキョウの大きなトレンドを作ったのは、千葉の佐瀬さんだ。花形と言い、花弁の固さと言い、色目と言い、消費者、デザイナーの期待に応える商品を作られてきた。また、一昨年、サカタのタネさんから無花粉のトルコギキョウが発表された。受粉しないので、箱に沢山入るし、横箱でも可だ。輸送の効率化が期待出来るので、農家手取りも上がるだろう。日本が世界に誇るトルコギキョウは、まだまだ進化している。

 もう一つ、消費サイドから見た話題として、アニメファンの間で、イベント会場に置く「フラワースタンド」を贈ることが人気だそうだ。平均価格は5万円で、中には10万円を超えるものもある。「フラワースタンドを贈りたい」とSNSで仲間を募る。20代が多く、男性が4割を占めるそうだ。秋葉原だけでなく、フラワースタンドを贈る専門店が、私の知る限り3軒ある。知らないところで、花の需要が活発なのである。

 さて、6月末までに新食品流通構造改善促進法と、新卸売市場法がセットで審議される。可決後、一年以上かけて条例他が作られ、その後に施行の流れだ。当初は来年度に施行されるものと思っていたが、場合によっては再来年の2020年度になりそうだ。『産業革命4.0』により、世の中は凄いスピードで変化している。現行の卸売市場法では対処出来なくなっていることも多いのだ。早い時期に施行される方向で決議してもらいたい。

 卸売市場法は、傷みやすい生鮮食料品花きを扱うための法律だ。特に「差別的取り扱いの禁止」、「受託拒否の禁止」、「代金決済の早期化」が必要とされる。これが、他の卸売業との違いが際立つ点だ。卸売市場は、商品の価値と需給バランスで価格を発見し、需給を調整する。一方、他の卸売業は、価格を固定化し、需給を変動調整し、品ぞろえを行い、流通コストを削減する等の役割を担う。

 ネットでB to C、C to Cが盛んになっても、卸売業は無くならない。そして、卸売市場は社会インフラとして必要な機能である。これを実証する理論が、ロナルド・H・コースの『コースの定理』、そして、マーガレットホールの『取引数量最小化の原理』、『在庫適正化(不確実性プール)の原理』だ。卸売業が、取引コストを減少させる生産性の高い業種であることを、これらの理論は裏付けている。ただし、各業種の卸売も、卸売市場も、今より数が少なくなることは事実である。卸売市場の場合、地域の食文化、花飾り文化の発信地になっており、地域文化の市場としてまとまる。また、グローバル文化を反映した大消費地の市場でまとまる。この二つに集約することが、国民の幸せにとって大切だ。


投稿者 磯村信夫 16:38