社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年09月09日

卸売市場は売り買いの場なので土台に商法、特別枠は、食肉・水産・青果・花き卸売市場は生鮮品流通の社会インフラなので卸売市場法と地方自治体の条例等で規制


 今日は重陽の節句。せり前取引ではディスバッドの菊がよく売れていた。 台風15号が、今日未明から神奈川東京を通過・北上、千葉に上陸し、せり時間を1時間遅らせて8時から開市とした。いろいろなものが飛ばされて、道路や鉄道もいつも通り通行することが難しかった。特に道路では、雨水が捌ききれず、各所で冠水。大田市場の周りでも、そういう箇所は多かった。我々は、8時開市と1時間遅れでせりをすることが出来たが、生産者はどうだったであろうか。昨日の昼、埼玉の荷主さんが荷を持ち込んでいたので、話をしたら、お彼岸向けのものがやられなければいいがな。と言っていた。被害が少ないことを祈るばかりである。生産のお仕事は、流通や小売の仕事と比べてみたら、施設栽培にしても外でやるのだから、そのご苦労は本当に大変なことだと思う。大切に品物を販売させて頂こうと、生意気だが流通業や小売業を代表して、お礼のようなことを申し上げた。

 さて、国は市場法を改正し、各地方自治体では条例などを作りこみ、来年の夏前に施行する予定である。今までの枠組みとは違うので、特に市場人あるいは市場流通を良く知る人にそのことを申し上げたい。というのは、卸売市場には独特の世界がある。少しオーバーに言うと、市場の中で、小火や事件が発生しても、消防署や警察を呼ばないで自分たちで解決しようとする。ちょうど学校に警察を入れることを良しとしないように、独立した閉鎖的なエリアと独自の価値基準があると思っているのである。しかし、今度の法律では、建て付けがそうなっていない。売り買いだから基本には商法があり、その上に差別的取り扱いの禁止等、生鮮食料品花きなどの傷みやすいものの流通の社会インフラとして市場法を適用するようにしている。
 
 例えば、案では来年から卸売会社は、品物を再上場できるようになる。その日のうちに全て売り切らなくてよい。しかし、普通の商売なら、買手の不利益につながらないよう一度仕切ったものを再度売ってもよい。普通の商売と同じように、いつ出荷していつ自分の会社が仕入れただとか、どのような理由で再上場したかだとか、当然に説明責任を果たし、表示すべきである。普通の商売では当たり前のことだ。食料品の製造年月日、あるいは賞味期限を偽って表示したり、何も表示しないで販売するということは許されるだろうか。言いたいのは、黙って再上場するのは、不誠実な商売になるということだ。市場法だけが変わったのではなく、原則自由ということは売り買いをしているということだから、当然商法がベースにある。鮮度が命の生鮮食料品花きの中で卸売市場は、早く売り切って小売店に渡さないといけない。それを卸が自己都合で再上場してはいけないのは、言うまでもない。やむを得ない時や鮮度が落ちない条件の時なら良い。

 卸売市場は内閣府の規制改革委員会から色々見解が出され、法律も無くすと言われた。無くなろうとしていたところを、こんなにすばらしい役割を果しているのかと市場機能を国は再認識し、新市場法を作り、地方自治体の条例策定されるまできた。条例の策定にあたり、食肉・水産・青果・花きの卸売市場で働く人や利用する人は、品物の出荷、調達について大きい会社も小さな会社も公正なビジネスのチャンスがあるようにする条例等の検討をお願いしたい。 ちなみに、東京都の方針案は、食肉・水産・青果・花きの4部類を一つの条例で運用するとなると「そうですね」と賛同できるものであった。

 


投稿者 磯村信夫 14:59