社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年02月20日

勇気を養う重要性


 今年はスキー場に雪が少ないので、仕事がない木曜日には出来るだけスキーに行こうとしている。ラニーニャが終息しつつあるというので、このまま暖かくなると時としてドカ雪になるがスキー場は大体が雪が少ないままで、5月の連休まで滑れるところは殆どなくなってしまうだろう。

 趣味でスキーをしているということもあるが、目的は勇気を養わないといけないと思っているからだ。中学の時、体操をやっていて、新しい技を覚える時など本当に勇気が必要だったのを覚えている。小学校4年の時は大磯ロングビーチで10メートル飛び込み台からきれいに飛び込んで、周りの人に褒めてもらえるのがうれしく、何回も何回もやり、翌日瞼が腫れて授業中黒板の字が見えなくなったことがあったが、体操の新技はそれよりももう少しおっかない。新しい技を空中の体感で覚えるためにはその頃出始まったトランポリンが有効で、使用して新技を練習していたら、はみ出して、僕がすっ飛んでいったので周りで支える係はおっかなくてよけた。結果、僕は体育館舞台のへりに腰をぶつけて器械体操ができなくなった。でも腹筋と背筋を鍛えて支えれば大体のスポーツは出来たのでそれ以外のスポーツはやっていた。

 大森園芸に入社して、1990年大田市場に入る時、セリの方式や仕事のやり方そのものを変える、特にコンピュータでセリをし、データを溜めてデータドリブンで生産流通消費拡大をしようと(これは京都生花でお世話になって教えて頂いた事)を目指した時も勇気が必要であったが、まだ40前だったからがむしゃらにやればそれで済んだ。しかし50になると花き業界はピークを過ぎ他の日本の産業と共にガクっと消費が落ち始めた。その時に変えなければならない、このまま「ゆでガエル」ではしょうがない、と思っていたのだがなかなか勇気が沸かない。或いは勇気が衰えていた。そこで“ロッキー”ではないが今更ボクシングというわけにもいかずスキーをまたやることにした。大好きなスキーなので挑戦できる。挑戦が面白い。こんなところでこんな風に、というのは例えば小樽の天狗山では真正面の小樽湾に向かって頂上から滑る。殆どの人は普通の上級者中級者コースで降りるが、おっかないが勇気をもって目の前のコースから小樽湾に向かって滑り降りる。(実はこうしてクラッシックの西尾会長がまだあまり上手ではなかった頃僕の後をついて降りてとんでもない目にあった訳です)自分が出来るかできないかわからないがとにかく勇気をもってやってみる。そうすると自分の弱みが見えてくる。転んだのを見られたり、山の中であればもがいてもう一度スキーを履くまで何回も何回も、10分ではきかず30分くらいかかるなどということもある。幸い雪崩に巻き込まれなくてよかったなと思うが、そんな時本当に情けなく思う。この様にして新しい技術や気構え、そうか少し怖くなって腰が退けていたからだ、とか、足の裏に神経が行き届かず前のめりになっていたせいだ、等たくさん反省をして体に覚えさせ、そして新しい自分になる。生きていることの唯一の証明は成長だという言葉があるが僕は現役である限りは正にそれは成長こそ生きている証だと思う。そのためには勇気をもって新しい事にチャレンジし自分の夢を、或いはあるべき姿へと担っていかないといけない。そうでないと夢が実現できない。

 今社長をしているので、会社の中で*聖人には位置づけることはできるかもしれないが、大切な事はやっぱり花形、スターになる事だ。ブロードウェイのオーディションの如く役をもらえる、それは過去のキャリアではいけない、今の実力で、そしてこれは心技体全てにおいてである。この様に思ってスキーをしているのだ。

 1ケ月くらい前になるだろうか。大田花きの取締役の須磨佳津江さんがNHKラジオ深夜便で「We Shall Overcomeはピート・シーガーの作詞作曲と思っていたけれど違うのですね」と言っていた。僕もてっきりそう思っていたが、この曲を1日おき月水金の大体AM4時45分前後に大田花き花ステーションの3階の外で、目の前に大田市場の青果棟や羽田飛行場が見えるこの場所で思わず口ずさむ。何に対してOvercomeかというと、21世紀になって花き消費が金額ベースで下がり生産も下がってきてしまった。これではダメで20世紀の時に思っていたとおり仮に日本の人口が少なくなってもそれは一人当たりの専有スペースが増えるという事だ。ウサギ小屋から犬小屋にそして一心地つける充分なスペースへという様に。そうなると花(切花・鉢物共)を飾るスペースが増える。だから花は人口減でも消費を減らさないですむどころか増やさないといけない産業なのだ。生産にしても小売りにしてももっと数が多くなければならない。それをやっていくのが花市場の一つの役目だ。こう思ってWe Shall overcomeを口ずさんで外に出るのである。

まずは皆さんと一緒に勇気。そして辛くても現実を、実態を踏まえ見据えそこから自分で変わらなければならないことを勇気をもって行い、自分が成長し業界も成長させる。これをやり遂げるという事だ。

無題



投稿者 磯村信夫  14:20