社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年10月18日

出荷物は物流問題からまず集中化。そして、その後少しずつ分散化


 来週の25(月)~27(水)の三日間で、(一社)花の国日本協議会主催の勉強会「フラワーサミット」がオンラインで開催される。花の仕事に従事されている方が、ちょっと仕事の手を休めることが出来る午後に開催する予定だ。協議会会員は無料なので、是非ともお時間を作って参加して欲しい。これからどうすればもっと花のある生活を楽しんでもらえるか。生活のそれぞれのシーンに花や緑が行きわたり、生活や環境を整えるものとしての花や緑の必要性を訴えられるか。サミットを通じて知っていただき、実行に移していただきたいと思う。

 さて、「10月20日」と「11月10日」、この2つは行楽の季節であり、生活者が冬支度をするので、例年、花きの相場が下がる時だ。今年も20日を前に今までの高値基調から相場が下がり、例年並みの価格になってきた。恐らく、10月末から11月月初にかけてまた相場が戻っていき、また11月10日に向けて下がっていくだろう。そして11月20日ごろには、すっかり冬の荷姿になって相場もしっかりしてくる。コロナ禍で、また近年の温暖化による天候異変で生活リズムがすっかり変わったのかと思ったが、秋は来るし冬も来る。そうは大ブレにぶれているわけではないようだ。少しのブレはあるが、例年通りの市況展開、需要動向に落ち着いている。

 このような中でも、主として産地の高齢化により各地域の出荷が少なくなっている。切り花では、産地の1つか2つの集配センターに集荷物を寄せ、産地から市場に向けたトラックの積載効率を高めて、一箱当たりの運賃を上げないようにしないと、トラック運転手の労働問題等も相まって、生産者手取りが減ってしまう可能性がある。更に、集配センターに一度出荷物をまとめると地元の集荷所からの横持運賃が発生するため、生産者の運賃負担がまずそこで発生する。積載効率を上げたトラックが消費地市場に行き、何か所も寄ると、もっと運賃が高くなってしまい、生産者負担が増える。それは出来ないので、出荷先の市場を更に絞って集中出荷しなければならない。これが切り花の輸送状況、また出荷状況だ。鉢物は、一部の先進地は産地集配センターがあるが、あらかたは庭先集荷をまだ行っている。これも運送店の集配センターに集め、そこから大型車で市場へ持っていかなければならない。切り花と同様、拠点的な市場に出荷物が集まり、そこから集散させなければならない現況になっている。

 今度のコロナ禍において、花き業界は観光業のような大打撃を受けた訳ではない。確かに大手仲卸で冠婚葬祭・イベントの仕事需要の比率が高かったために、2019年対比で80%台のところもまだあるが、これらの需要を除けば、鉢物、苗もの、一般的な切り花の家庭需要を中心にしたものは、2019年対比で100%に近い。しかし、2020年の3月、4月の暴落での精神的なダメージは、大変大きなものがあった。それ以降、高齢化もあり、花づくりを辞めてしまった人が多く、生産が少なくなっているのである。生産者の意向なのでやむを得ないが、同じ供給量なら単価は上がる。特に2021年になって、この傾向が顕著だ。もうこれ以上、生産を減らして欲しくない。今、花き生産をされている生産者に生産面積を増やしてもらいたい。   

 供給が減っている現段階では、経済合理性から出荷市場が絞られるのはやむを得ない。そのため、地域市場や地元市場が中核市場へ荷の買い付けを行う形になるのも仕方がない。しかし、供給量が増えれば、地域中核市場次で地元市場は直接産地と交渉を行い、物流は中核市場も手助けをする。商流は地域、地元市場が直接産地と、物流は中核市場のセンターを使う。運送業界の働き方改革が終了する期限の2024年を目途に、この流れをどうしても作っていきたい。
 

投稿者 磯村信夫 16:28