社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年03月29日

全国の花市場の構図2030年に完成させ、2025年までに形にしておく


 今朝の仲卸通りは、3月15日(月)の賑わいに相当する活況で、3月というのは、卒業やら異動やら入学やら、人生でとても大切な時期で、花が多く使われる。家花見で、桜がこれだけ多く使われるのも、ここ3年の傾向だが、特にコロナ禍で、都心のフローリストだけでなく、街のお花屋さんにも注文が多く舞い込んで、市場に発注されるようになった。ジョージワシントンではないが、桜を切ってはいけないことになっているので、それように栽培された桜を要望するとなると、市場流通の活躍のしどころである。  

 さて、来年度から花の新しい時代が始まる。花き流通に関わる組織も、年度末そしてあと数日で新年度になるわけだが、新しい形を生み出そうとしている。ひとつの方向性を示そうと、「勉強会-共同仕入機構-地域文化振興協議会」という勉強会を作り※、実践を通じて、具体的には、花を流通させながら、1億3千万人の人口が今後8千万人になっていく過程でも、全国津々浦々その地域にあった花が、その地域に住まいする人たちのため供給できるような仕組みを、市場間ネットワークで作ろうとしている。
※(一社)日本花き卸売市場協会は、商売に通ずる活動は出来ないため

 日本以外では、仲卸だけが集まって作られた卸売市場も、卸売市場と呼ばれるが、日本では卸売市場法の元、卸売会社がいなければ卸売市場と認められない。産地から直接荷を引く、委託出荷で受けられる卸売会社がいないと、卸売市場とは言えないのだ。会ったこともない荷主が予告もなしに、卸売市場に出荷して、一定の価格でその品物が仕切られ、確かにその代金が荷主のところに行く、また、誰がその荷主の花をいくらで買ったかということが、透明感をもって明確にわかる。このことを、嘘を言わず、きちっとお知らせする、これを卸売会社は義務としているが、こんな仕事の仕方をしている商いが他にあるだろうか。これをするのが市場の卸売会社なのである。

 そこで本題だが、卸売会社がいる卸売市場を日本国内のどこに配置していくことが望ましいか。今後も、産地からの輸送手段は、トラック輸送が多いだろう。大田市場や豊洲市場は、陸では、高速道路網そして鉄道網が完備されている。モーダルシフトができるということだ。また、生鮮品の荷受けバースが大井ふ頭にある。横浜大黒ふ頭は、30分かからないところにある。この首都圏の生鮮を受ける国際船の港バースが大田市場、豊洲市場のすぐそばだ。そして、羽田空港は目と鼻の先で、1時間足らずで行ける成田空港は国際貨物の本拠地である。このように、陸海空の物流網であれば4つの手段が使えるところはそうは多くない。しかし、少なくとも3つ、高速道路網、鉄道、航空は必要だ。そういったところにある卸売市場が、地域拠点として頑張ってもらわないといけない。

 次に、やはり県に1つないし2つは、最低卸売市場が必要だ。それは、地域によって文化が異なるからだ。そして、足りない荷物、あるいは品揃えで必要な荷物は、量がないのであれば、地元卸売市場は、地域集散市場から買えばよい。でも、いつも一定水準需要のある花については、直接産地から荷物をもらう。物流上、地域集散市場にお願いをしても、商流は直接産地とやり取りする。なぜか。地域によって色の好みや使う時期や、装飾の仕方が異なるので、等階級、品種など必ず違ったものになるからだ。全国一律でないところが、その地域の持ち味だからだ。今、地域(同一文化圏)に3つも4つも卸売市場があるようなところは、合併等でまとまることが求められる。一定規模の市場にならないと、4トン車満載荷物を直接受けられない。また、産地が遠距離の場合には、大型車の荷物を1社で受ける必要があるからだ。そうでないと、生産者の運賃負担が高くなりすぎてしまう。卸売価格に対して、運賃比率が20パーセント以上だと、手取りが少なくなってしまい、出荷しても利益が出ないのだ。  

 コロナが収束し、財務体質が回復してくるのが2024年から2025年。DX、働き方改革、物流改革、ESG経営※1など、企業が存続する為の必要条件が続々と出て来ている。これを考えると、20世紀から続く全ての花の卸売市場が独自でやっていけるのも今が最後。これ以降は、一定規模未満の卸売市場では、仲卸としてはやっていけるが、卸売市場としてはやっていけなくなる。日本の経済界では、状況に合わせて思い切った変貌を遂げようとしている最中であり、花き業界でもそうでなくてはならない。2024年2025年までに地域卸売市場は集約される。この場合、花市場は、もし場内に青果市場があるならば、合併もしくは吸収してもらうということも、地域の人々にとって、今後も花を供給する上で欠かせない合併の仕方なのかもしれない。

 このように、卸売市場そのものが、県に1つないし2つ(政令都市以上の都市ではそれ以上)。そして、ロジスティック上、県をまたいで地域に集散する市場が1つ。○○地方という地域広域市場が1つ。そして、さらに、東京・大阪のような大規模な拠点市場。このような、図式にならざるをえないので、このような形にして、それぞれがネットワークを組む。繰り返すが、今後は、物流改革、そしてDX。それができるだけの体力が卸売会社にはなくてはならない。そして、各卸売会社は財務的にも安心な卸売会社である必要がある。あなたの会社はSDGsにどう取り組んでいますかといったときに、このように取り組んでいますといえる会社であり、一定規模の会社でなくては、社会インフラとは言えない。決して、花は規模の経済ではないが、最低限の規模は必要だ。それは、4トン車で荷物を受けられる規模。それが最低の規模であるから、そのような形で市場間ネットワークを組む、あるいは合併等でまとまらないと花を安定して供給することが難しくなる。


※1 ESG経営(E:環境を良くする、S:社会を良くする、G:ガバナンスが効いた、透明性が高い事業運営)




投稿者 磯村信夫 17:04