社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年09月17日

信頼の必要性


 金融業界ではスルガ銀行問題が話題だが、銀行の統廃合だけでなく国内産業のあらゆる業種で、今後は経常収支から数の調整が加速化する。日銀は金融緩和政策で弱冠の是正を図るとしているが、地銀をはじめ、地方の金融機関の経営はますます厳しくなっていくだろう。金融業界ではどのようにして数の調整を行っていくのか。その知恵をぜひとも授かりたいと、これから勉強することとした。地域における金融業界の合併の仕方、まとまり方を、この先想定される花き市場合併の手本としたいのだ。

 花き市場が生きていくには、その街に官庁街やビジネス街、歓楽街、専門店街・百貨店等があることが条件であると考えている。何故なら、生存条件として、経済活動があるだけでなく、シアターや美術館があり、郷土料理や花飾り等の地域文化が必要だからだ。分かりやすい食文化でいえば、盛岡の冷麺や宇都宮・浜松の餃子、横浜のシュウマイがそうであろうか。

 しかし、前段の条件が備わっていたとしても、信頼を得られない卸売市場は存続していけない。財務体質が健全であることは基本だが、信頼される会社は、卸売市場としての仕事上の遂行能力があり。有言実行し約束を守る会社だ。さらに、誠実で嘘をつかないことも必要な条件である。二重仕切りや仕切り改ざん、文書改ざんを行っているようでは言うまでもなく先はない。

 ネット社会の現代において、あらゆる信頼が揺らいでいる。例えば、皆さんがスマホや携帯で操作した時、関連した商品の広告等が画面の横に飛び込んできたことはないだろうか。行動の一つ一つが個人データとして収集されているのだ。行動だけではない。テレビの前で話をしていると、その話ですら収集してしまうテレビがある。こういった危険に、EUは2018年5月「GDPR(General Data Protection Regulation):一般データ保護規則」を施行した。個人データ取得の制限や、データの漏洩が発生した場合に通知を受ける権利、デザイン・デフォルトによるデータ保護等が、ルールとして決められている。ビッグデータは便利だが、特定の業者が私たちを商品として扱っている。生活の範囲内でいつも買うように仕向けられており、便利だし好みに合うから購入するが、主体的に考え何かを買うという訳ではない。従って、「多様性の中から生まれる新しいイノベーション」の観点からすると、非常に大きなリスクになる。

 話を戻すが、金融や卸売市場等の決済業務を伴う業種、品物が物流上物理的に手に渡るかどうか、そういった取得に関わるような業種。そこは前述した「信頼性」がとても大切になっている。日本はあらゆる業界が数の調整局面にきているから、その中で、地元の信用金庫も、あるいは、花市場も、信頼のおける会社が生き残り、広く文化的な背景を持つ消費者と小売店のために存続する意義があるのだろう。信頼性の観点から、2020東京オリンピック・パラリンピック後の人口減・高齢化社会でも十分に花き市場が社会に役立つよう、生産者と共にそれぞれの組織体をチェックし、その地で新しい花市場を創るつもりで、合併などに取り組んでいくべきである。


投稿者 磯村信夫 14:01