社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年07月10日

付加価値の高い花を、評価する業界に


 今、値上げラッシュの中で賃金をどのように上げていけるか。これが今後の日本経済の好循環に繋がるもので、クリアしなければならない課題として挙げられている。昨年、花の相場はコロナ前の二割高になったが、小売店や量販店等が生産経費・流通経費の値上がりを考えて価格転嫁出来たかと言えば、決してそうではない。従って、その分経営が苦しくなり、本年、相場が下がる場面があった要因に繋がっていると思う(昨年はコロナ禍で出来ていなかった結婚式やお葬式が執り行われた結果の二割高であった。今年は需要が平常に戻ってきたこともあり、これが本年の相場を下げている要因でもある)。

 さて、これから消費者にどう納得をしていただきながら価格転嫁を行い、小売店や卸・仲卸、生産者まで含めた花き業界の従業員の賃金アップに繋げていけるだろうか。解決策として、①産地・生花店のブランド化、そして少子高齢化の日本で、②業者の調整とネットワーク化が欠かせないだろう。まず、産地・生花店のブランド化だ。例えば長野県の「フラワースピリット」は、上条さんを中心とした生産グループが一つの会社を立ち上げたもので、長野県内で一定の品質をそろえて指定された品目の花を生産し、フラワースピリットのブランドとして出荷している。業界筋では、どの品目も品質が高いと評価される名の通ったブランドだ。嗜好性の高い花は、このようにブランドで勝負していく必要がある。またこれは別の話となるが、生産者のブランドが、なかなか消費者まで届いていない実態がある。生産者からサプライチェーンをつなげ、情報を消費者までつなげ、ブランドとして認識されていく必要がある。

 「良いもの安く」と言っても、少子高齢化の日本で消費者が増えるということは難しい。花の場合、一人の生活空間が少子化とともに広がるので、食べるものと比べたら需要を減らさない可能性は高い。しかし、トータルでは需要のパイが広がるのはなかなか難しい。従って、人口減が顕著でない都市部はともかくも、今後は(人口十万人ほどの)コンパクトシティーを一単位としてやっていかなければならないだろう。コンパクトシティーを一単位とすると、あらゆる業種、あるいは行政サービスが成り立つからだ。地方はコンパクトシティーを目指しつつ、業者数の調整とネットワーク化を進める必要がある。

 働く側の環境や賃金だけを見ると、多重下請けの解消やオンラインで出来る仕事はオンラインで行う等、賃金をあげながら良い働く環境を作っていくことも重要だ。一週間で一、二回出社し、あとは在宅で行うスタイルの仕事も今は当たり前にある。花き業界も通勤時間短縮のための職住接近や、フレックスタイム、出張の代わりにリモートの使用、在宅勤務等に取組みつつ、一方で会社への帰属意識を高めることも行っていく。このように、働く環境と所得の向上を前面に押し出して、やっていく必要がある。

 最後に、若い世代が少なくなっているので、会社の組織はルーティーン並びにコアサービスは年配者でも出来る仕事として基本におく。その上に、時代に合わせた商品開発や新しいサービスを行う仕事をつくる。入社10年になったら(その前からも勿論だが)守破離で仕事の改革が出来てくる。従って、このコアサービスの上に置く新たなサービスや商品開発を行う仕事を、30~45歳ごろの社員に任せる。この二重構造の組織の在り方を、日本のどの会社も作っていくべきであろうと思う。そして人事政策は「生涯一選手」・「生涯現役」、そして年功序列制の廃止である。

 投稿者 磯村信夫  13:11