社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年12月05日

今年の暮れをどうみるか


 いよいよ冬らしくなってきた。市場に出荷される荷を見ていると、輸入品が復活してきているのが分かる。それはそうだ、赤道直下の高地が世界の花の産地になっているから、エネルギー価格高騰の折、国際的な産地は気を吐いているはずだ。しかもコロナがインフルエンザ並みに扱われるようになっている国も多いので、国際的な産地はコロナ前の気持ちでいる。しかし今まで繋がりのある日本の輸入商を通じて売り込みがあるものの輸入商はコロナ禍で痛んだ財務体質の花の市場や仲卸、花束加工業者がいる事を知っているから財務諸表を取り寄せたり或いはそれぞれの調査機関に調べてもらったりして、集金できるところに出荷しようとしている。そして国内では2024年運送会社の働きがい改革があるから今までのように気楽に荷を地方に出荷する事ができない、運賃が高くてペイしない可能性があるからだ。そうなると、輸入の花も国内の大手産地と同様、1に財務体質、そして市場や仲卸であれば、これからも頑張ってくれる取引先がついているかどうか。2に経営方針である。3に運賃問題。この運賃問題の中に数量がどのくらい捌けるのか、とにかく海外の産地は1農場あたりが大きいから、日本の個人出荷の様に2、3個では運賃倒れで話にならない。となると、出荷先はやはり国内の産地と同様、市況が高くても安くても受けられる所は限定されてくる。荷が行くところと行かないところに分かれてくる。市場に出すにしても、市場外で直接出荷するにしても、今は業種に関わらずあらゆるものが二極化の時代で、まず数の調整局面である事が二極化であり、その意味は廃業したり、やめなさいというような、数の調整を社会はしていると思われる。

 わたしたちの国、日本を見るときに可処分所得の伸びが低いままであることが気になっている。この冬花き業界においてもボーナスがそれなりに出たところと、世間よりも低いが頑張って出したところと本当に餅代みたいなところ、この3種類に分かれている。コロナになってからエンゲル係数が可処分所得の中で25%もあるから、アメリカだったらガソリン代の値上がり、日本の場合には野菜の高騰がえらく可処分所得に響くと、これは心理的な影響が大きいと言われている。

 今、野菜が安い。これだけ生産経費が上がっているという状況で農家の皆さんは大変だと思う。そうすると生活者は、可処分所得に余裕があるとみて良いのか、或いは加工食品など主食も含めて原材料が上がっているから、野菜で帳尻を合わせざるを得ないのか。先週も報告したが、今、アクティブシニア層の人達が旅行に行ったり外に出たりしている。特に品物を先にカゴに入れて値段は後から見ているアクティブシニアの富裕層が消費を引っ張っているのは高級品と今まで大変だった旅行や外食などの業界だ。だがいつまでも旅行に行っている訳ではない。年末にかけては当然戻ってくる。又、年齢層によっては地方の実家で過ごす人も多くいる筈だ。そうすると、新年の花は松や千両が天候の加減で出荷数量が少ないため、ふんだんに使うというわけにはいかないが、それも踏まえて、不足分は他の物で補いながら花の商いをやっていく。そしてその商いの数量や金額は昨年並みかそれより少し上でいけるのではないか。そのためには今、野菜と同様花の相場も下がっているから消費者が9月のお彼岸くらいから持ち始めた割高感、これを払拭していく努力をする。そして「お値段以上○○○」と、とにかく割安で価値があると感じてもらう。そこが決め手になって行くように思う。特にここ2週間これを消費者に良い印象を与えるように手を尽して乗り切っていきたいと思う。  




投稿者 磯村信夫 16:07