社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年07月03日

人は変われる。日本は変われる。卸売市場は変われる。


 2020年のコロナ発生から3年が経過し、今まで懸案であったことが「これでは駄目だ」と本格的に改善政策が進み出した。天候異変のように改善が進まないものもあるが、少子化問題への取組みや日本株の値上がり、企業の賃上げ等、人口減に対応するための政策が本格的に打たれてきている。もちろん、国民のためにメリットのある方策をしていこうとする中で、マイナンバーカードのように普及に向けた取組みに度重なるミスがあったりするなど、様々な躓きがあるのは、トータルとしてやむを得ないことであると思う。セーフティネットをいくつも講じながら、縦割り・役割別・地域別等の弊害を取り除き、効果のあるデジタル化やDXを行っていくことだ。行政サービスだけでなく、あらゆるサービスを、国民一人一人の為にやっていくという意識が欠かせない。

 日本の人口減は供給と需要の問題で、国そのものが萎んでいくことを現実問題として考えなければならない。人手不足の中で賃上げ、また、待遇の改善が出来る企業だけが残り、それ以外は淘汰されることになるのだろうか。我々卸売市場の役割は、その地域で不可欠なものだと考える。しかし、収支が合わず、従業員が増えない。産地からの委託物も、買参人も今までより少なくなる。一方で、地域では人々が生活をしている。その人々のために、卸売市場はどう存続していけるだろうか。この課題を解決するためには、卸売市場政策研究所の代表・細川氏が提唱する「新市場法の下の卸売市場の第三段階」に進むことが必要だと考える※。つまり地域を超えたネットワークを構築することが重要なのだ。ネットワーク化の中で、収支を合わせるのはなかなか大変だ。生鮮食料品花きでは、必ず物流が伴う。物流は、大きい供給、旺盛な需要があるときにトータルでは安くつくが、宅配便がそうである通り、一個一個では消費者負担が高くなってしまう。それではどうしたら良いか。卸売市場の成功事例は既にある。長野県の長野県連合青果(株)と(株)長印が合併した「(株)R&Cながの青果」、そして山形県の(株)山形丸魚だ。この二社は県内の隅々まで青果や魚を供給している。また、供給の余力を見て、県外にも卸売市場として進出している。花きでは、札幌花き園芸(株)が人口減の都市の卸売市場を子会社にして、ネットワーク化を図っている。それ以外には、任意だが大都市の中核市場を中心に、そこから足りないものを品揃えするネットワークを組んでいるグループもある。

 既に起きている供給減、需要減においては、採算を合わせることが本当に難しい。賃上げや労働環境の整備、福利厚生等、日本が遅れてきたことをやっていかなければ、人手不足倒産になる可能性だってある。そこで大切なことは、今までよりも負担が重くなった物流費等の経費をどのように吸収し、消費者に負担がいかないようにするかということである。そのための必要条件は、お互いに認め合い、仲良くすることだ。即ち、覇権争いをしたり、チームを組んでいる相手のせいにしたりしないこと。次に、どうすればその地域の消費者に都市部と同じ値段で買ってもらえるか。サプライチェーンを組んでいる中で物流の共有だけでなく、商流の大元になる知識や信用、資金繰りの共有、また産地の繋がりの共有等、広い考え方でネットワークを構築していかなければならない。そして、経費をあたかも一つの会社のように考えることが必要になる。これは大変難しいことだが、地域の消費者の為に、日本国民の為に我々は存在しているのだから、その存在意義や、目的に焦点を合わせれば出来るはずだ。更に、行政区域を飛び越えて地域中核市場を作り、ネットワーク化する等が出来るよう、行政を説得することも必要である。壁はいくつもあろうが、日本の他業界は今それに向かって、新しい時代に向かって本格的に前に進み始めているのである。遅れをとってはいけない。


 ※卸売市場政策研究所 代表 細川氏の「第三段階論」

 以下の段階を経て今の卸売市場がある。
 第一段階(問屋制卸売市場)
 第二段階(中央卸売市場法、旧卸売市場法)
 第三段階(第二段階の制限撤廃、公設・民設同列化、中央・地方の区別撤廃)
 第三段階では、生鮮食料品等の流通の広域化が進み、市場間格差も拡大する中で、広域的な支援・協力化を進める必要があると提唱している。

 投稿者 磯村信夫  14:07