社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年11月07日

人が集まる組織の人事制度~農業関係編~


 社内でマンネリ化が怖いので、上司にone on oneで部下を一人一人個別に面談し、生活から仕事のことまでコミュニケーションを取ることをしてもらっている。勤続年数を重ね役職者でない人、55歳で役職定年になる人、60歳の定年など企業によって様々だ。会社員にとって特に50歳代を過ぎると、不安な事が多くなる。55歳がどこの会社でも1番所得が高い歳だが、それは学費や家のローン等お金が最もかかる年代なので稼がなくてはならないのと、主に役職手当が付いているからである。しかし、おおよそ60歳までにはその役職からはずれ職位は下がり給与も下がる。役員クラスになれなかった場合は60歳になった時、定年で給料がガクンと下がる。しかしこの問題を解決したのが、ペイ・フォー・パフォーマンス=成果主義、である。成果に対して報酬は支払われるものであり、職位年齢で評価するのではなく、成果を上げる実力者には応分の所得があり仕事のやりがいがあるようにしなければならない。こうすると60歳以降所得はあまり下がらない人も出てくる一方、成果を出せない人は、ガクンと下がっていく人もいる。特にそれは65歳で年金が出始まってからだ。ペイ・フォー・パフォーマンスで所得の下がった人に仕事のやりがいやらを訊いてみると、責任が軽くなった分、運動やら趣味の時間もでき、仕事自体は日数が少なかったり時間を短くしてもらったりしているが、充実はしていて、むしろ現役の時よりも充実した仕事ができているのではないか、荷主さんやお花屋さん、そして若い同僚の社員たちにも悦んでもらえている様に感じる、と言っている。

 産地でJA常陸大宮地区枝物部会がある。発端はリタイヤ組の人達が地元の耕作放棄地をこのまま放ぽっておけない、みんなでここに桃を植えてひな祭りのお節句の時に子供たちに喜んでもらおうということで始まった部会である。元はリタイヤ後の人達の第2の仕事として始まったのだが、若い人たちも素晴らしい仕事だからやりたいと言うことで、正にSDGsを実現するための枝物部会になり現在老若男女100人を超えるメンバーがいるのである。系統農協もお手伝いをし、年配者でも十二分に枝物生産農業ができるようにし、手が足りなかった時や、他何でも足りなくて困っている時にお互いに融通し合って助け合う、この様な部会になっている。それを見ていると大田花きの社員も、元気な限り70歳代はおろか80歳になっても社員としてやっていってもらうために、社内の人事制度を整え直す必要があるかもしれない。

 難しいのは教育費や家のローンが1番かかる40歳代後半から60歳代前までのこの時期。いくつかの会社は労使で話し合い、60歳以上は給料を下げてお金が必要な年代にその分をまわそう、という企業が出てきた。中には役職者であってもその年代で給料を下げる、でもペイ・フォー・パフォーマンスで、営業だけではなく各分野で実績を上げた人はそれなりの所得が出る、というようにしている。元気な人がたくさんいる農業関係にとってはこの様な人事制度が良いのではないか。所得は無論の事、仕事をすることによる人間的成長そして仕事上のやりがい即ち生きがいを得る事ができるからである。ワークライフバランスを保って仕事をしてゆくことは、年齢に見合った「大きな仕事」でも「小さな仕事」でも、仕事のやりがいをその人に与える。2008年から人口が減り始めた日本において、女性や年配者にもっと仕事についてもらえるように処遇をよくするだけでなく、ライフステージに合わせて仕事をしやすいようにしたりする必要がある。専門職制度にしたり、在宅勤務で成果が上げられる職務に配置転換するなどだ。このような考えに則った人事制度は、まさに昔から日本の会社がとってきた家族主義経営だ。

 そして働く人がすくなくて困っているから、働く者の立場はもっと強くしなければならないし、そうなってゆく。特に花き業界では、種苗会社と生産者は消費者(生活者)と同じ立ち位置で最も重要である。そして技術を持つ生活者にサービスする小売商がその次。その下に系統農協や運送店、卸売市場(卸会社・仲卸)、ブーケメーカー、関連資材業者が位置付ける。花き業界は消費者に花を買ってもらって幸せになってもらうために存在しているから、目的のための重要度とリスクと仕事の難しさからこうなる。

 しかし花き業界は実際、どの役割が欠けてもまわって行かない。だからそこで働く人々の処遇は、「大きな仕事か小さな仕事か」「pay for performannce」の基準をもとに同じくらい豊かさでないといけない。こういう職場に人が集まり、人口減でもここは成長する。

 


投稿者 磯村信夫 18:11