社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年12月24日

世界レベルを意識する


 24日(月)のセリでは、今まで堅調だった大輪白菊の相場が下がった。ディスバッド菊の白は横ばいか、せいぜい2割安。しかし神馬はじめ、仕事花向けと仏花用白菊は上位から下位等級まで下げたのだ。何故なら、九州方面中心に量が出てきているから、そして、今年の暮れは「用途別に栽培された白菊」が量的に足りないと見込んで、市場外流通で輸入品の手当てが大幅になされているからだ。海外産は進化しており、用途別のスペックで販売されている。

 輸入品の中でも、マレーシアからの輸入スプレー菊は卸売市場でもすっかり定着しており、市場流通が大半だ。しかし、主として中国産、一部韓国産の白菊は、卸売市場では馴染みの薄いせいもあり、「しっかり売ってくれる卸売市場が少ない」と輸入商は嘆く。国産の白菊は世界一だ。それと比べるから、輸入品で良いものもあるのに国産との単価差がありすぎた。その結果市場外流通が多くなり、今年はそれが20日頃から出回って安くなった。白菊は余り気味とは大げさだが、潤沢感が漂っている。

 食品を例に挙げよう。一人世帯・二人世帯が多くなり、また、団塊ジュニア層では共働きが当たり前になった。従って、お惣菜を買って家で食事をすることも大変多くなった。外食やレンジでチンすれば食べられるような状況になってくると、当然、家で作る手間の分、余分に加工業者が入ることになる。加工業者が食べていく為には、安くて良いものを入れないといけない。小売価格が高くなり過ぎてしまうので輸入品が多くなる。この一連の流れが野菜である。
 
 花きも、ブーケメーカーがスーパーに卸す。スーパーでは委託販売の場所もあるが、買取り販売が殆どである。しかし、スーパーの花束に合うスペックの花を探しても、中々手当て出来なかったのが現状だった。そして本年、白菊であれば、中国の良い農場、良い作り手、輸入品を現場でチェックできる輸入会社に注文し、質(量と品質)、単価、納期を決めて事前の契約取引をした人が、少なからずいたのだろう。
 
 花き生産者はメーカーである。そして現代、メーカーはグローバル競争の時代に入っている。スポーツでも、日本一でももちろん賞賛に値するが、国際大会やオリンピックで勝者になれるよう世界を見据えなければならない。スピードスケート女子500メートルの覇者・小平奈緒選手は、オランダに武者修行へ行った際、「この人たちと同じことをやっていても勝てない」と実感し、日本人の体に合わせたトレーングを行った。その結果、世界記録を打ち立てることが出来たのだ。この「日本流で“世界に勝つ心”」にこそ、今という時代がある。
 
 では、国内でのサービス業なら日本一で良いのかというと、決してそうではない。「世界で見てどのレベルか」という意識が大事だ。日本独特の価値観があるので、サービスの質は一概に世界と比べようもない。しかし、大統領も一般の人も、人であることは変わらない。商売でもそれ以外でも、人に対するサービスであることに変わりはないから、例えば挨拶にしても、日本独自のおじぎであっても、それが世界レベルで心のこもった所作であるかどうかが必要なのだ。
 
 今日、日本のスポーツ界には、世界で通用する優秀な若者たちが多い。日本にいても、「いつも自分が世界レベルで通用するものになろう」と意識し、努力している。仕事でも同様だ。世界を見据え意識しないと、結局、自分が行っている仕事の質が分らないし、会社が存続出来るか分からない。これを24日の白菊の下げ相場に思うのである。日本のスプレー菊産地はマーケットインに徹し、冠婚葬祭用・アレンジ用・花束用・仏花用等、品種や産地でマレーシア、ベトナムと競争している。そして世界レベルの闘いで棲み分け、共にスプレー菊の消費を拡大している。これを白菊生産者に期待したい。
 
投稿者 磯村信夫 14:53