社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2017年06月19日

世界レベルで見た時に、少し特殊であったものが、固有の文化的な需要レベルまでトーンダウンしてきた菊の役どころ


 先週の年金が支給される6月15日、月中の仏花需要と父の日需要があり、久しぶりに切花・鉢物ともしっかりした相場となった。偶数月の15日近辺で相場がしっかりしだすのを、私が気づいてからもう2年になる。ちょうど、空き家率の問題が国の関心ごとになり始めたころだ。

 本日、大田花きのセリ前での産地ご挨拶で、輸入商社のグリーンウィングス社様が、ベトナム・ダラットで生産されている「カリメロ」の本格出荷へ向け、PRされていた。カリメロは、SP菊の小輪咲きタイプのもので、枝がはっていて、丸い花がついている。マトリカリアの八重種よりも輪が大きく、ステッツマンやクリスマスゴールド等、静岡県特産の2、3輪仕立てのピンポン菊がかつてあったが、あの輪数が多くついて、花色が豊富なタイプとみてもらって良い。この花は、「フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA2016」の特別賞に選ばれている。

 現在起きている事象の中には、20世紀から続くものから、21世紀に新しく出来たもの、そして、未来に向けての需要を先取りしたものがある。この「未来を先取りしたもの」、つまり、今後の潮流を示すトレンドの先端を走る品目や品種が、「フラワー・オブ・ザ・イヤーOTA」を受賞している。賞の運営を行っている(株)大田花き花の生活研究所は、花関係で起きていることをカガクし、未来予測をしているが、カリメロは特別賞をとっただけのことはある。

 世界の菊の需要動向としては、仏花で使用される一輪菊以外の場所にピンポン菊が使用され、もうかれこれ四半世紀、人気を保ち続けている。日本以外の国、特に、仏教以外の宗教の国では、一輪菊・ディスバット菊といっても、ピンポン菊が日本の様に高い評価を得ている訳では無い。むしろ、潮流としては、ポットマムを作りだしたYODA社他、いくつか素晴らしい種苗会社があって、日本でもポットマムが一世を風靡したことがあったが、同様に、シャムロックやアナスターシア等の咲かせた輪菊が人気となっている。一方、SPタイプでは、日本以外の先進国において、ピンポン菊が、特に2013、14年以降、リーマンショックから経済が立ち直ったタイミングで人気となっているのだ。

 日本人にとって、仏花素材になっている花は、花持ちが良い花である、菊は、その意味で消費者にとってもコストパフォーマンスが高い。しかし、空き家をリフォームして住もうとする人は、若い人達が多い。また、子どもたちが巣立った後に家をリフォームしようとする年配者も、「膝が痛い、腰が痛い」で、畳の生活が少なくなり、イスと机の生活が多くなっている。そういう住まいの変化に対応出来ている無印良品やニトリ、イケア等が提案する空間に似合う菊は、一輪菊であれば、日本ではピンポン菊を中心にしたものだろう。SP菊、小菊であれば、カリメロのようなニュアンスを持つ菊類だ。

 本年をもってして、日本の菊類が、戦後の成長段階から、新たに第二段階に入った年としたい。より多様化してきているのだ。葬儀には白菊、SP菊を、仏花には一輪菊と小菊。殆どこれで、日本の切花需要の4割近くをしっかり取ってきた。しかし、仏花・葬儀需要は根強いが、使用量は減ってきた。従って、輪菊、国産のSP菊、小菊は、違った役どころを演じて、消費者から支持を得ていかなければならない。違った役どころとは、ディスバット菊やカリメロのような、個性的で分かりやすい、レストランや玄関、リビングに飾られる役どころである。

 

投稿者 磯村信夫 : 15:47