社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年03月18日

レベルアップのために勉強する


 3月に入り、日経トレンディの特別付録『トヨタ式片づけ&段取り術』を読んで衝撃を受けた。トヨタの仕事は「ジャストインタイム」で、必要なものを必要なときに作り、必要以上の在庫を持たないようにする。さらに「あなたの欲しい車はこれでしょう」と消費者の欲しい車を提案し、常に新しい需要を作り続けている。凡事徹底、あるいは、良いと思って決めたことを徹底してやり続けていくということだろう。これによって2兆円近くの利益を生み出し、多くの税金が支払われる。国は必要なところに貰った税金を振り分けていく。頭が下がる思いだけでなく、反省させられた。少しでもトヨタに近づくべく、社内研修や仕組み作りを徹底しようと思う次第である。

 3月読んだ本の中でもう一冊紹介したい。岡田屋呉服店という一つの店を、ジャスコ、そしてイオングループへ発展させた影の功労者・小嶋千鶴子氏がいる。彼女について書かれた『イオンを創った女(東海友和著・プレジテント社/2018年11月)』だ。仕事上ではイオンの方と直接接することはないが、イオンの社員教育を担当されていた方とはお話したことがある。半端ではない社員教育のようだった。我が花き業界が時代にズレていると感じることがあるのも、一人一人の勉強が足りず、考えず、実行出来ずに厚みが薄いせいではないか。まず、自学自習はもちろんのこと、社内でも研修、教育をしていかないと、これ以上発展させることが出来ないとの危機感を覚えた。 時間の使い方まで含め、研修や勉強を行い実践していくことが必要だ。

 先週のコラムでは、市場の価格競争(ベルトラン競争)について、また、花き流通業界で起きている価格と利益のことを書いたが、成熟社会の今、自分で価格を決められるということがあるだろうか。例えばコンビニでは、本部からの指導があり値段の自由はきかない。店舗数が多いと雖も会社数が少ない(寡占状態)ので、コンビニの価格は一定の範囲内にある。これはスーパーも同様だ。そして価格統制をしても、同じ会社の売場なので独禁法には当たらない。花店の場合、花キューピッド殿が自分たちで決めたギフト商品について価格を統一していることや、100店あまりの売り場を持つ日比谷花壇殿やパークコーポレーション(青山フラワーマーケット)殿で統一している値段も、同じ会社の売場なので独禁法の違反にはならない。個人経営のお店においては価格は自由だが、需給のバランスを見た価格になる。また、農業の場合、例えば、農協や全農県本部が決めた価格にしても、農業については原則、独禁法の適用除外なので、価格統制をしても違法にはならない。日本の農業従事者は、流通大手が価格統制していることを私企業がやっていることと同じであると捉え、これが例外であることを知らずにいる場合がある。農業者は自分で作った野菜や花の値段をつけられないと思っている人もいるが、自分で値段をつけられる人の方がむしろ稀だ。そんな絶対的な独占は少数で、公共料金でも競争を促すのが一般的だろう。
 
 世の中はダイナミックプライシングで絶えず時価を探っている。ダイナミックプライシングが嫌だったからソフトドリンクメーカーは別会社を作り、経費をかけても言い値で販売出来る自動販売機の売り場を確立していった。これとても、今では80円から130円までの値段の自動販売機が出てきている。他にも、いつのまにかディスカウントストアーが幅を利かせている。今、世界で希望価格を言うことはできるが、自分で値段を決められるような、それだけ寡占化した会社や組織は、厳密に言えば世の中にはないのではないかと思う。例えば、花の直売所での売上げは、800億円もあるという。これは、売れた商品の価格の合計で、売れずに生産者が持ちかえって廃棄された商品もある。そしてこの直売方式のところと卸売市場では、役割が違う。直売所では売れずに時間が経ったものは値引きする。それでもダメだったら捨てる。一方、中央卸売市場であれば、差別的取り扱いの禁止、受託拒否の禁止があるから、生産者は何もお伺いを立てずに自分の農産物を出荷することが出来る。そして需給バランスで時価を生み出している。卸売市場の役割は違うのだ。
 
 もう一度、ジャストインタイムの仕事の仕方、それぞれの経済原則まで含めた勉強を、花き業界、あるいは農産物流通業界では行う必要がある。そうしなければ、自由の名の下、我々卸売市場も含めた供給サイドの身勝手な行動で、1番肝心な消費者に幸せを届けること、健康を届けること等、本来の、使ってくれる人たちへのメリット、買ってくれる目的からズレてしまう。このことを今月、強く感じている。
   
   
投稿者 磯村信夫 18:13