社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2018年02月12日

トレンドに乗り遅れたらつぶれる


 日本の携帯電話をみてもわかる通り、世界のトレンドに乗りおくれたら、携帯電話機そのものが製造できない。携帯電話のAppleやサムスンは、産業のフラット化であらゆる業種を結びつけ、それを携帯電話に凝縮して、我々の日常生活の中でなくてはならないものとした。業界を乗り越えて、なくてはならないものにするということは、今の時代、あらゆる産業においてとても大切である。

 去年、大宮で開催された世界盆栽大会の前に、花き業界での問題を業界人の前で定義してほしいということで、スピーカーのひとりとして出席した。業界では専門店が少なくなって、量販店の花売り場が物日には良いが通年を通すと販売面積を確保できず、花やみどりの消費が縮こまっていると言われている。しかし、実際は違う。雑貨屋さんや家具屋さん、ネット販売に得意なロングテールなどのサイトで花やみどりは非常によく売れており、メインの顧客ターゲットは団塊ジュニアだけでなく、ミレニアル世代や平成生まれの人達もターゲットにしている。いつのまにか、ドライフラワーも売れ筋になりつつあり、昔あって今消滅したスターフラワーや、今あるユーカリやアジサイでも楽しんだ後にドライになるようなものは、有名雑貨店チェーンや花き業界でいう関連事業者が供給しており、人気となっている。言いたいことは、既存の花き業界は時代に合わせて、あるいは花のある生活をしてもらうべく、新しい商品を提供できていないということである。

 例えば、池袋のサンシャインシティで毎年おこなわれている関東東海花の展示会は、目を見張る品質であるが、卸売り市場出荷単位である1束や1トレーを出品条件としている。これは産地でおこなっている品評会の典型的なスタイルだ。そのため、「これだけ立派なものを消費者目線で見せていない。大切なのは消費者目線だ。思わず買いたくなるように見せる。その見せ方や多数のお客さんを引き込む集客の仕方が大切だ。」と指摘された。一般の人達は花がこんなに素晴らしいものだと知らない。花の魅力を知らない。生活に取り入れれば思わずにこにこする。そんなことがわかっていない。これを知ってもらい、わかってもらうことが大切なのに、67回の伝統ある関東東海花の展示会はこれだけのお金や労力を使ってなんともったいないことをしていると、小売りで上手に販売している社長は言うのである。業界は過去、顧客は未来。花を買ってくれる可能性のある人、ここの目線で業界自体を立て直していく。しかも業界の枠を越えてフラット化していく。生け花の先生やフラワーデザイナーは芸術家であり教育者である。指圧やカイロプラティックの人と一緒で、ある意味での医療師である。また精神を立て直してくれる、心をより解きほぐし、柔軟にさせてくれるセラピストである。このように、業界の枠をとっぱらった、あるいはクロスオーバーした心構えで花の仕事をしていってほしい。

 ちなみに、大田花きは価値と受給バランスで日本の建値の相場を出すことを仕事としているとともに、未来を先取りした花を流通させる使命を担っている。この二つが商流を流通させる弊社のかかせない仕事だと思っている。また、物流は鮮度保持物流。近ごろ、貯蔵まで含めた倉庫業としての役割も担っている。情報流は、産地情報、消費地情報を伝えること。「顧客は未来」、「トレンドに乗り遅れたらつぶれる」などの具体的な情報を花き業界の人達に伝えること。株価情報ならぬ花価情報を取り引き先に的確に伝えることである。それ以外に、ICTがらみの新しい手段に投資し、これらを使ったコミュニケーションをおこなっている。最後に資金流である。日々の取り引きの決済だけでなく、経営相談も積極的におこなっている。もちろん事業転売や設備投資等の投資のアドバイスをする窓口もある。主に弊社は4つの角度から、それぞれのお取引先や取り引き事情を見ており、これを携帯電話会社のAppleのように総合的にまとめながら日々運営をしている。

 弊社の宣伝めいてしまったが、読者の皆様方には、既存の花き業界の仕事の仕方では、価格競争しか残っていないが、業界を越えたところで初めて進むべき道があることをお伝えしたいと思う。




投稿者 磯村信夫 : 15:27