社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2019年07月08日

デジタルプラットフォームは脅威か


 20世紀後半からインターネットが登場し、普及し始めてから20年以上が経過した。その結果、仕事や生活における様々なことが短時間に行えるようになった。あらゆるものにおいてコネクテッドがなされていて、過去の実績をふまえたアルゴリズムで提案がなされる。それを乗り越え、考えて行動するところに、人間の役割があるのだろう。即ち、人間の価値はイノベーションにある。

 今から約30年前、コンピューターはスタンドアローンだった。私は卸売市場の卸・大田花きを経営するにあたり、これを旧市場の時に一緒だった仲卸とコネクテッドを行い、経済界から賞をいただいた。その後、1995年頃にインターネットが普及すると、それを通じて取引先とやり取りを行った。ICTによって1番生産性が上がったのはロジスティクスだろう。例えば、紛失が殆どと言ってもいいほど無くなった。即ち、情報を使った自動化により、生花店が購入したものをしっかり届けることが出来るようになったのだ。
 
 現在、インターネットはさらに発展、普及している。花き卸売市場業界では、ブーケメーカーが量販店に納品することが増えた。そして輸入品が増えた結果、市場経由率が統計上は下がった。そして市場法が抜本的に見直され、新たな法律が施行されようとしている。業界ではその市場法について取り上げられることが多い。しかし、その前に卸売市場と同じプラットフォームビジネスが新しく増えてきた点に、私は大変な危機感を感じている。それも、世界的に同じやり方で通用しているデジタルプラットフォームビジネスだ。

 第四次産業革命の中において、新しいデジタルプラットフォームの登場する分野は以下のような特徴がある。取引コストが高い。情報が同等ではない(出荷者や買い手の情報の質や量が共有されていない)。規制に守られている。こういった分野だ。例えば、大田区は民泊を許可したが、民泊サービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」のプラットフォームが利用出来るようになっている。また、タクシー業界では、日本では(京都・大阪を除く)ウーバーを利用した一般人の営業を許可しなかったから、タクシー会社が全社共通に使用出来る配車アプリを用意した。大変便利に活用出来る。このデジタルプラットフォーム分野の一つに、卸売市場プラットフォームもあるのかもしれない。アマゾンがフィジカルの有機スーパーマーケットを買収したように、また、フィジカルの本屋チェーンを作っているように、力あるデジタルプラットフォームの会社が日本の有力な卸売市場を開設者として支配する。あるいは、フィジカル市場を買収し、そこに新たにデジタルプラットフォームをくっつける。こういうことをしてくる可能性はあるのではないか。そのような危機感を持っているのだ。東京の場合は東京都が開設者になることが決まっているから、我々自身がフィジカルプラスECプラットフォームをどう作っていくかだ。

 カード会社まで含め、デジタルプラットフォームの会社は巨大である。そして、デジタルプラットフォームが出来れば出来るほど、中抜きされないようにしなければならない。その為には、「中央卸売市場大田市場・大田花きのこのプラットフォームを中抜きすると、リスクが大きいし損だ」と言われるくらい、出荷者と買い手にとって付加価値の高い品物を扱い、サービスを導入しなければならない。大田花きの場合、どこよりも豊富な情報、しかも的確な未来情報を提供する。そして、数多くの花を調整し自分の所にあったものを調達出来る。このメリットが買い手にある。出荷者においては、母の日の翌日にカーネーションを出荷しても断られることが無い「受託拒否の禁止」のメリット等を掲げ、大田花きを抜いた時のリスクとして警鐘している。

 フィジカルとデジタルプラットフォームの課題をどう解決するか。この課題が今、卸売市場にはあることを卸・仲卸は心にとどめ、来年の新市場法の施行までの間、自分たちの生き方を決めておかねばならない。それぞれの市場により、また卸売会社、仲卸会社により、経営の仕方がかなり違ってくるのが来年の6月からだ。それまでどうするかを、第四次産業革命の中、また、少子高齢化の中、戦略を立てていく必要があると思う。



投稿者 磯村信夫 18:28