社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年06月12日

コロナ前と比較しJR東日本の定期収入は約80%、国内線旅客数は約90%となっているそうだが、花はどんなふうになっているだろうか


 2023年5月、新型コロナウイルスが5類感染症に移行された。その後の花きの需要動向について考えたい。

 まず、冠婚葬祭についてだ。コロナ前、結婚式の招待客は平均70人程度だったが、現在は50人台後半くらいの回復だ。挙式件数はコロナ控えの分もあり多い。葬式についても件数は多く、大きなお別れ会があったこともあり、スプレー菊を中心によく売れた。一方で2022年、小さな葬儀社が廃業すると、そこに花を納めていた地元の生花店も葬儀関係の花をとりやめ、一定規模以上の葬儀関係の生花店が葬儀の花を担当することが多くなっている。2023年度の冠婚葬祭需要については、件数は前年並みだが規模は小さくなり、金額的には昨年比85~90%くらいではないかとの見通しをしている生花店が多い。また、葬儀の花が日常生活に近い花の装飾になっており、菊類やカトレア、胡蝶蘭の使用件数は下がっている。

 小売はどうだろう。昨年度、量販店の花き売り場数が前年を下回った。家庭需要については専門店が45%、量販店が55%と言われているので、量販店の花き売り場数の落ち込みは販売本数・鉢数に大きな影響を及ぼしている。唯一気を吐いている量販店は、花束やアレンジをお惣菜と同じように店の看板にしている量販店である。時代を捉えた品揃えを行い、需要を喚起出来ている量販店と専門店は売上げを上げている。一方、相変わらず“待ち”の姿勢で、販促キャンペーンやイベント等を行わず、品揃えもニュース性の乏しいところは売上を落としている。売れている花の品目も、仏花等の和風のところから、一、二段階、自然調のもの、草花や枝物が多くなった。色合いもニュアンスカラー、いわゆるくすみカラーが人気だ。こういったものを品揃えで来ているところは、値上げもしつつ前年を上回っているが、顧客数は前年比95%くらいのところが多い。気を吐いているところがこの数字であるので、多数の一般の店は去年の卸売単価の高さにも変わらず、小売価格にあまり転嫁出来ず、来客数で90%くらい、売上ベースで前年比85~90%くらいのところが多いのではないだろうか。そしてコロナ禍で大きく台頭してきたサブスクリプション(以下、「サブスク」)は、2022年に行き詰まりを見せたが、業者によって堅調なところもある。サブスク専門のところは再び業績が上向いてきているところが多い。ただ、リアル店舗と並行してサブスク販売を行っているところは、サブスクをやめているところも数多くある。

 ネット社会の影響もあり、地方の消費者も都市部と同じような生活をしている。つまり、枝物を観葉植物と同じように部屋に飾ったり、ナチュラルな花が選ばれたりしている。自然調の品目が地方市場でも売れ筋になっている。前述したとおり、日本の花き業界では、和風のところからもう一段階、自然調のものを好むようになってきているのだ。しかし、その流れについていけていない地方卸、仲卸も多い。コロナが5類に移行した2023年年度、花き業界の売上は楽観的に見て10%、悲観的に見て15%位、落ちる傾向にあるのではないかと思われる。そうならないためにどうすれば良いだろうか。今生産されているものについては、卸・仲卸会社は販売促進を行う。また、来年の作付けを生産者と一緒になって考えていく必要がある。そして、より一層の小売店のサポートをすることが重要だ。小売店が売りたいものを集荷し、売りたいものを作付けしてもらう等、バリューチェーンをバリューサイクルにして回していく。小売店に繁盛してもらうことが、卸・仲卸会社の繁盛に繋がる。即ち、生産者の手取りが増え、繁盛する。今年はこの仕事に注力していくことになる。業界をあげて生活者に花を買ってもらうことに一致団結しようではないか。


投稿者 磯村信夫  15:53