社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2022年10月10日

コストプッシュ型のインフレの中で花をうまく売るには


 食料品やエネルギー価格が高くなって、賃上げが追いついていないので、スーパーへ行くとかなりシビアな買い物になっている。でも供給サイドは、付加価値をつけて値上げをしたり、誤魔化しと言われるかもしれないが、明るいパッケージにしてみたり、色々な工夫をして消費者に買ってもらおうとしている。値上げはみんなどのメーカーも或いは供給者もできているわけではないから、本格的な値上げは、来春になるだろう。

 コストプッシュ型の値上げで、需要が多いから値上げする、というのとは日本の場合わけが違う。なので、消費者はちょっと困惑する。12月のボーナスはすぐだが、企業も値上げできずに、そうは従業員に大盤振る舞いできない。しかし来春は一定額各企業では賃上げをする腹積もりでいる。何故かというと、日本の殆どの企業はこの上半期に、設備投資を実行し、経営者が思い描いていた見通しが大体推測の範囲内であったため、新しい日本をつくるくらいの強い気持ちで、賃上げできるところはする、という事である。ここでまた格差が開かなければいいがと心配しているが、ぜひとも花き業界のそれぞれの会社は投資と賃上げ、の好循環をやってもらいたいと思う。

 供給サイドだけのお話をする。投資の中には、賃金を上げるという人的投資だけでなく、教育がある。本当に世界を見ていると、会社が学ぶ組織とならない限り生き残っていけない様に思う。状況は絶えず変化し、これで本当に世界は良くなっているのか、と思うほど、戦争や独裁政権の暴言や行動が、人権や多様性を育んでいこうとするこれからの地球社会に悪い影響を与えている。だが一方に、国連を期待せず、自らやっていかなければならないと行動を起こしている人達が多数出てきている。ESG(Environment,Social,Governance)経営をしていない会社は上場会社では許されないから、資本主義のあり方が完全に変わったのだと思う。社会の利益を最優先し困った人を助ける、消費者は応援消費をする。この様になってきている。そして供給者としては、経営をしながらも、中小企業と雖も、教育と無駄の排除をサプライチェーンの中で行う。大企業はプライベートブランドで一気通貫し、そのサプライチェーン上の無駄を排除する。欲しがるものを、欲しがる形にして、欲しがる量だけ、欲しがる価格で提供する。何かこう言うと、トヨタシステムであり、セブン&アイホールディングスシステムの様だが、正にユニクロまで含めて、一気通貫をし、サプライチェーン上の無駄を排除する事によって素晴らしいものを消費者に提供していく事が出来る。要するに、プライベートブランドの競争になってきているので、中小零細の構成メンバーばかりである我々のサプライチェーン上の花き業界は、ここで共に仲間として、そして共に働く協働者として小売店とその先の消費者の決済、或いは情報の取り易さ、又、場合によっては宅配もできるようにしておく必要があるかもしれないが、そこまで含めて共に考えて無駄取りをし、値上げをする。その値上げは、消費者の負担がないように行い、我々はリターンを頂く。とっても難しい事だとわかっているが、こうしていかなければならないと考えている。「売るに天候作るに天候」の生鮮食料品花きだから、必要な時に出て来なかったり、いらなくなってから沢山出て来たりするから協力は必要だ。また、中小企業が分業化してサプライチェーンを構成しているから、自分の仕事の範囲しか考えていないと全体最適は作れない。これを纏りのあるものにする。値上げ運動の最中、イオンのトップバリューは気を吐いているが、それはこのやり方で消費者に便益をもたらそうと頑張っているからだ。我々もこれしかない。是非とも仕入れにいらっしゃっているお花屋さん達は、仲卸や卸と一緒に組んで小売販売をなさるようにお願いします。そうしないと来春に向けて今でも荷が不足気味なのに、もっと足りなくなる可能性があるからです。生産者を応援する意味からも、一緒に産地に行くだけではなく、サプライチェーン上の問題をそれぞれ出し合い、解決し、コストパフォーマンスの良い販売をして頂き、コストプッシュ型のインフレに立ち向かっていきたいと思います。


投稿者 磯村信夫 13:44