社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2021年07月26日

オリンピック選手から教えてもらったこと


 東京2020オリンピック大会が、ようやく選手が主役のオリンピックになってきたように思う。ここに来るまでも今でも、コロナ禍や数々の問題はあったが、やはり平和の祭典であり、スポーツそのものは、武力ではなく人類が作ったルールに則った文化の祭典である。これに変わりはない。古代ギリシャ時代に、休戦とスポーツの祭典、そして、ギリシャの都市国家が力を合わせて自国の発展を願うことに繋がったオリンピックが、近代オリンピックとして今東京で行われていることは大変感慨深い。東京オリンピック開会式では、205の国と地域、難民選手団の選手・関係者が会場を行進している姿を拝見し、人間の素晴らしさ、そして、ルールに則って人類が一致協力し平和を勝ち取ろうとする姿に心を打たれた。亡くなった母が、「ここはどこの国」、「ここはどこ」と、オリンピック開催年の度に、地図帳を新しく購入していたのを思い出した。

 1644年から48年にかけて、ヨーロッパでウェストファリア条約が締結された。世界最初の近代的な国際条約とされる。ローマンカトリック以外にプロテスタントを認めたものである。また、「国家」を認め「帝国」が実質的に解体された。その時の神聖ローマ帝国はハプスブルク家やローマンカソリックが帝国といえば帝国である。ペテルスブルグで共産革命が成功し、社会主義がソビエト、ソ連で国をまたぎ帝国化していく。ウェストファリア条約は当時の、そして、ソ連崩壊後、現在の中国を除いて誠に普遍的な価値を持つ条約である。その条約からさらに人々の自由主義、民主制、そして、主体性を認めたのがオリンピックだと思う。香港や台湾(台北)の選手団が入場したときに胸が熱くなった。また、オランダ領やアメリカ領のそれぞれの地域からも参加しているのを見ると、これも胸の熱くなることである。  

 ギリシャからパクスロマーナ、そしてパックスアメリカーナと今、それぞれの国が新しいスポーツを生み出した。そして、五輪もストリートスポーツのスケボーや三人制バスケットボール、もちろんスポーツクライミングやサーフィン等、今後はEスポーツもと、オリンピック種目は確実に変化を遂げている。普遍的なものと、新しいものを絶えず入れること。これはどの業界にも言えることだ。もちろん、花き業界も例外ではない。本日も「暑くてオリンピックでお客さんが来ない」と、街の花屋さんがセリ場で呟いていたので、私はこう申し上げた。「何か変えることはしていますか。例えば、ワンストップで購入できる場所や、涼しい場所へ出店を考えたりはしていますか。ネット販売への更なる注力や、サブスク販売は取り入れていらっしゃいますか。ただ単に昔と同じように待っているだけでは、商売が上手くいく筈がありません。地域の顧客のことを考え、時代と共にお届けする手法やお知らせする方法まで含めて変えていかなければ。気温が高いことや天気が悪い等のことを言っていても詮方ないことです。これだけの夏でも花の生産があります、そして、色々なチャネルで生活者は花を買っているのです」。
 昔からある花屋さんは「待ちの姿勢」が多い。しかし、新しい花屋さんは打って出ている。  

 良いと思ったら実行することが大切だ。どうしたらお客さんにもっと気楽に来てもらえるか考えながら経営をする。当たり前のことを当たり前にすることが必要だ。オリンピックを見ていると、一瞬のスキのゆるみで勝敗が決まったりする。誰にも負けない今までの努力と、そして、現場で張り詰めた、生き生きとした感覚を持てるかなのだろうか。あの対応、あの反応は我々がそれぞれの仕事で目指すべきものであることを教えてくれる。
  


投稿者 磯村信夫 20:30