社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年02月27日

インフレで価格志向が強まる中での販売


 休日を利用して外に出たりするたび、或いはスキー場などでも、物の値段がどのくらい上がっているか、また、安売りで勝負していると印象のある小売店の混み具合などを見ている。

 ロシアのウクライナ侵略でウクライナ側は決着をつけたいところだろうが、まだ今年も続きそうである。そうなると、エネルギー価格が上がり小麦を筆頭に食料品価格も高止まりし、コロナでサプライチェーンが寸断された影響は未だに残る。そして、日本の場合にはゾンビ企業が3割とも4割とも言われていて、この春賃上げをすることが経済の健全化に繋がるとしているが、中小零細企業では難しいところもある。因って、コストプッシュ型のインフレは続き、買い物行動において今までは、「良いものを安く」だったのが、「安くて良いもの」と価格が第一になってきている。こうなると、支出を抑える意味でも、ミレニアル・Z世代も花を買ってくれるようになったサブスクリプションに、陰りが見えて来て、店頭売りや仕事花での販売の仕方とサブスクリプションとのつなぎ止めを再度真剣に検討せざるを得ない。花の調達価格が2割上がっているし、資材や光熱費、家賃も上がっているからみんなが値上げしている時に小売価格を値上げしてしまわないと赤字になる。だから2割値上げできるのか、少なくとも1割はもう一度値上げせざるを得ない。去年の秋から2回目の値上げだ。

 その間割高感がないようにやってきたことは、枝物や葉物など季節感のある花持ちの良いものを使うこと、スプレータイプの花を多く使いそのまま生けても良し、心得のある人なら枝をカットしてコップなどに生けるなどしても良し。人手不足で忙しいが産地名や生産者名の出来れば写真を花に付けて、誰が何処の産地で作ったというメッセージとして伝える事などを心掛けてやってきた、物を買うという事は応援の意味もあるからだ。これらは今後共やっていく。それにプラスしてどんなことが必要か。街を見て値上げしても来客数が減っていないなと思っている店は、オネストカードではないが、お客さんに、消費者に信頼されている店であるという事だ。花持ち保証もそうだろう。サブスクリプションでもお店に来ていただければ1日1本花をさし上げるという方式の有名店で店員さんとコミュニケーションをとるので、愛着だけでなく信頼関係が芽生えているお店もある。信頼で商売している花屋さんといえば、港区のとある花屋さんではご自宅の鍵を預かっており、旅行中の鉢物の水やり、旅行から帰った時切花が生けてあるようにしておくなどをしている。今は値上げばかりで値段重視と言われ確かにそうではあるが、そこまで大きな信頼関係はそれ以上ものである。又、そのお店や会社が社会課題へ対応しているかという事もとても大切だ。例えば大田花きであれば、原発の被災地で花の産地化に取り組み、素晴らしいアンスリュームを作っている産地がある。そこを応援すべく大田市場の仲卸、その仲卸の顧客は応援プロジェクトで日本の中でもアンスの一流産地とその地域を認めた。こういうこともしている。日本の神様だから神棚の榊も国産の声もあり、社会的課題に取り組むため、ソーラーパネルの下に植物を植え、自然エネルギーCO2の削減とともに不足している国産の榊を生産するプロジェクトを種苗供給者、パネルの業者、小売店が協力し合っている。何か違うよな?と思うことを真っ直ぐの事に戻す仕事など、とにかく、スノーピークやパタゴニアではないが、社会的課題に取り組んでいるという事がお客様に分かってもらう事が大切だ。あとはロスフラワーのようにあえて売ろうという押し付け販売のような売り方をするのは良くない。ゆったり休んでいただくために家庭の中で過ごすということがある。その時に花が必要でこちらの方は花を販売したいがそうはいってもロスがでる。ロスフラワーをおまけにするのか、或いは近くの幼稚園に届けて壁にマグネットで子供たちは手の届かないところだが、暴れても大丈夫なところへ飾れるようにプレゼントしたり、特に精神的な病の病院に届けたり、もっと手軽にドライフラワーにして売るも良し、差し上げるも良し、スワッグならそれでもいいなど、ゆっくり生活しがむしゃらに商売するのではなく売る方もゆったりとする、こういったことが必要になる。あとは花だから非日常性。そういえば、また非日常的な草間彌生の水玉模様やかぼちゃ模様などが注目を浴びている。確かにそうだ。ディズニーランドもそうだが、この非日常性がとても大切になっている。お店でのディスプレイは結婚式だけでなくお葬式でもそういった演出があったらいいだろうな、と思う。まだほかにもあるかもしれないが価格志向が強くなった消費者に花を今まで以上に買ってもらうためにはこのような仕組み作りが欠かせない。

 一番大切なのは、繰り返すが、その企業の信頼である。商品だけでなく店員そして会社の理念パーパスなどがとても大切なのである。

 



投稿者 磯村信夫  16:41