社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2024年01月29日

もう一度、1997年、1998年の花き産出額6,000億円規模に出来る


 今、花き業界の種苗から生産、JA等の生産組織、トラック・船・飛行機・鉄道の物流会社、卸売市場、輸出入商社や花束加工業者、それぞれの多岐にわたるカテゴリーの小売店、植物園や花みどりを売り物にしている観光地等々、それぞれの企業で来期予算を立てている最中ではないだろうか。その際、堅実は良いが、弱気になり過ぎている予算や行動目標を立ててはいけない。

 マスメディアやSNSにおいて花や緑の話題に人気が集まっているのは、ここ2、3年続いている通りだ。NHKの植物学者が主人公の朝ドラも終わり、マスコミやSNS上での追い風は確かに弱まってはいるが、今までが帆を上げなくても前に進める状況だったのだ。これからも努力すれば、確実に風を捉えることが出来る状況にある。

 現場を持っている花き業界人は、アリの目で判断し丁寧に仕事をする。従って、前年よりも売上げが下がったりすると消極的になりがちだ。しかし「花き振興法」が成立し、農水省は2030年の花き産出額4,500億円、2035年の6,500億円を目標としている。花き業界人はこの目標に向けて努力していかなければならない。絵空事だと言う人もいるが、1997年、1998年の花き産出額はこの規模にまで到達していた。「いつかはクラウン」というキャッチコピーで、街に白いクラウンがいっぱい走っていたように、お葬式では数や規模は違えども、白一輪の籠花、白一輪中心の花祭壇で揃っていた。それが今は多様化の時代だ。時代に合わせた供給を行っていかなければならない。

 人口減少の一途を辿る現在、オフィスや一人当たりの生活空間は広くなっている。そこに飾られる花や緑の需要は必ずある。1997年、1998年を体験した私からすると、今の花き業界の縮み具合は、時代に合わせた需要に応えられていないからではないかと思う。それぞれの場や、その人その人の生活空間でも必要とされる花の需要は違う。現在の花き産出額は約3,500億円と芳しくないのは、それぞれの需要に向けて我々が的確に努力してこなかったからではないか。ここを反省して行動すれば、楽観的な見通しでもなんでもなく、目標を達成できると信じている。花き業界の誰もが「もう一度ここを越えなければならない」とする花き産出額6,000億円に向けて、サプライチェーン上の横の連帯を高めながら、花をもっと使ってもらう努力を、買ってもらう努力をする。ここを自分ごととして予算の中に反映させ、次年度に向かってもらいたい。

 「パーパスや理念を持って仕事に取り組んでほしい」と、以前もコラムでお伝えした。大の花好きでも、切り花は1世帯で1週間に1束、鉢物は1ケ月に1鉢程度の購入頻度である。花はこんなに商品回転率の悪いものだ。しかも、プレゼントの花束を注文すれば、お客様の要望に沿って、世界でたった一つしかない花束を目の前で作ってもらえる。そんな親切な、手の込んだ商品が世の中にあるだろうか。こんな大変な仕事だから、パーパスや理念を意識して、仕事をすることが必要になるのだ。このパーパスや理念は会社によって違うが、花き業界全体が「人々に花で幸せになってもらう」ために動いている。この意識を持って仕事をすれば、種苗から生産、小売までのそれぞれの業界人は、必ず需要に合ったものを供給出来る。物流・流通業者はフレキシブルに働き、生活者はそれに応えて買ってくれるようになる。花き業界はもう一度、6,000億円規模を達成出来る。この希望は実現する為にあり、改善を行い、イノベーションを起こし実現するのだ。




 投稿者 磯村信夫  17:10