社長コラム 大田花き代表取締役社長 磯村信夫のコラム

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2023年03月27日

どうすればもっと買ってもらえるか、生活者と小売店からの視点と価値観で生産・流通


 昨日近所を散歩していたら、早咲きの緋寒桜の蜜を野生のインコが食べて花を落としていた。近くにソメイヨシノが咲いており、また少し行くと登記所通りのアメリカハナミズキがもう咲いている。今年の冬が寒かったせいもあり、一斉に花が咲きだした。北国ではこのように一斉に咲くのだろうと思った。

 朝、市場へ来て見ると、切前(咲き具合)が緩い花が多い。確かに自然はそうなっている。また、生産者の人手が足りないのも理解できる。だが、我々は、生産・運送・市場・小売のプロ集団であり生活者に買ってもらわなければならない。生産者や市場は、わーっと一斉に咲きだした時、この市場に集まった花を店頭に並べて販売する。今年は出荷量が少なかったし寒かったから咲いている花が良かった。お店が華やかで賑やかだったろう。しかし冬場と比べて今はお店に本数や鉢数を1.5倍、時によっては2倍置いてもらわなければならない。それできれいに見せるのは切前が咲くとわかっていながらも硬めの花であることが必要だ。寒暖差があるが暖かくなっていく時に、生活者は咲くとわかっていれば少し硬めの花を選ぶだろう。その指令がぱっとできてないといけない。今日の荷物を見ていると、今までよりも硬めに出荷している産地は20%ほど。あとは陽気で、または切前が間に合わなくて少し咲いたものを出荷している。これでは生活者に選んでもらえないし小売店が相場がこ慣れてきたから多く買おうと思っても量を買えない。まず卸売市場は生産者と事前に相談し、切前基準を1段硬めにしてもらう事、そして運送店まで含め鮮度管理を出来るように、小売店まで1000温度時間値以内(切って出荷してから積算温度で1000温度時間)で渡せるようにすること、即ち産地の温度管理、保冷車、卸売会社の低温化荷捌き化をしていく必要がある。それがプロの仕事というものだ。

 新年度が始まる。もう一度心新たに生活者に買ってもらえる花を作り流通させる、そのためのプロとしての行いをコミュニケーションを密にとり、やっていかなければならないと今朝の市場の荷型をみてつくづく思った次第である。

 そしてもう一つ。昨日は沖縄戦の始まりの日であった。1945年3月26日。慶良間諸島に米軍が上陸した。ワンジェネレーションとは30年の事で2世代も過ぎているが、地上戦が行われたところは今でもその地に辛い事柄が受け継がれて生きている。だから、沖縄の人と内地の人と太平洋戦争での体験からくる戦争観やら国に対する思いが違っていて当然なのだ。台湾問題があり、東シナ海もかなりきな臭い。そんな時、習近平主席がロシアを訪問した同じタイミングで岸田首相はウクライナに電撃訪問した。中露、イラン、北朝鮮などの国々は僕にとって全体主義の国家だが、そこと民主主義国家との政治的対立が明確になりウクライナはその最前線で死を賭して戦っている。絶対に勝利をしてもらわなければならないと思っているが何故こんなにも頑張れるのか。それはつらく悲しい過去があったからだ。その本を皆様方に紹介したい。

 「ブラッドランド」上下巻 ティモシー・スナイダー著(ちくま学芸文庫)という本である。これによると、ナチス政権とスターリン主義政権は、流血地帯といわれる旧ソ連邦の地帯で合わせて1400万人もの人々を殺害した。そのはじまりは、スターリンが政策として指示したソヴィエト・ウクライナの飢饉で、これにより300万人以上が命を奪われた。さらに1937年、38年とスターリンの大テロルによって殺戮が続き、およそ70万人が銃殺され、その大半は農民か民族的少数派の人々だった。その後ソ連とドイツは手を結び、協力してポーランドとその知識人層を破壊し、1939年から41年までのあいだにおよそ20万人を殺害した。やがてヒトラーがスターリンを裏切ってソ連侵攻を命じると、ドイツはソヴィエト人捕虜と、包囲したレニングラードの住民を故意に飢えさせ、400万人以上を死に追いやった。ドイツは占領下のソ連、ポーランド、バルト諸国でおよそ540万人のユダヤ人を銃殺またはガス殺した。ドイツとソ連はたがいに煽り合い、ドイツが民間人50万人以上を殺害する結果となったベラルーシやワルシャワのパルチザン戦争などの大きな罪を重ねた。こうした残虐行為は1933から45年の同時期に同じ地域で繰り広げられ、その経緯をたどることは、きわめて重要なできごとをヨーロッパ史に組み入れることでもあった。ナチス・ドイツとソ連による大量殺人政策のすべてにより、ここに流血地帯の歴史が完成した。

 一部ではあるがこういった経緯があるためウクライナは今、頑張れるのである。そしてこれらの経緯を我々が知るためにもこの本を皆様にもお勧めしたいと思う。  



投稿者 磯村信夫  16:52